bookworm's digest

33歳二児のエンジニアで、日記をずらずら書いていきます

記事一覧 ブログ内ランキング 本棚

2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
tacbonaldの本棚




アジアンタムブルー

 

 

アジアンタムブルー (角川文庫)

アジアンタムブルー (角川文庫)

 

 

 

アジアンタムブルー』    /    大崎善生

 

★    ×    80

 

内容(「BOOK」データベースより)
葉子を癌で失ってからというもの、僕はいつもデパートの屋上で空を見上げていた―。万引きを犯し、衆人の前で手酷く痛めつけられた中学の時の心の傷、高校の先輩女性との官能的な体験、不倫による心中で夫を亡くした女性との不思議な縁、ファンの心を癒すSMの女王…。主人公・山崎が巡りあった心優しき人々と、南仏ニースでの葉子との最後の日々。青春文学の名作『パイロットフィッシュ』につづく、慟哭の恋愛小説。

 

 

大崎善生さん、過去に絶対なにか読んだことあると思い、ブクログmixiと漁ってみたところ、『孤独か、それに等しいもの』という小説を数年前に読んでいました(内容は全く覚えていませんが、、)。

本作は『世界の中心で愛をさけぶ』が思い起こされるド直球恋愛小説、個人的にはあまり刺さらず、、

 

 

内容は前述の通り、恋人である葉子が病死した主人公・山崎の現在と回想を織り交ぜた小説。

前半は葉子については多く語られず、どちらかというと山崎が万引きしたエピソードや、初めて性器を見せてくれた女性が自殺したエピソードなど、山崎の人格を形作るための話が中心です。

そして後半がほぼほぼ葉子と話。出会い、付き合い、病気が発覚してからニースで死を迎えるまでの一部始終が描かれています。

 

私が少し残念だったのが、まあ単に私の読み取り方が素人なんでしょうが、前半に出てくる山崎の変わったエピソードが、後半に特に活かされることなく、単なる紹介で終わった(ように感じた)点。

教室で性器を見せてくれた女性が自殺するシーンなんて、まるでAVみたいで意味不明で、一体この体験が山崎のその後にどう影響するのか!?と期待して読んだのに、特に発展が見られることはありませんでした。

こうなると、まるで性描写で読者を刺激しただけのように見えて、その後のSM女王の描写や、デパートの屋上でセックスアピールしてくる女性とかも全部そういう風に受け取ってしまいました。

 

エロ(やグロ)は人間の本質を描くために必要、という話は聞いたことがありますが、本作のエロは客寄せパンダに見えなくもないと思ってしまいました。。

 

 

すいません批判だらけになってしまいました。

ここ最近恋愛小説で良いと思ったものになかなか出会えず。それは単に私が年老いただけなのかという悲しい事実、、

いい恋愛小説があればどなたか教えてください。

 

おかあさんの扉

 

おかあさんの扉 (オレンジページムック)

おかあさんの扉 (オレンジページムック)

 

 

 

『おかあさんの扉』    /    伊藤理佐

 

★    ×    87

 

(この商品について)
伊藤理佐、40歳で母になる! 産休明け第1弾は、日々成長する我が子の姿をライブ感覚で描く失笑、苦笑、爆笑の三重笑4コマ144連発。 雑誌『オレンジページ』の人気連載が一冊になりました。 オットの人・吉田戦車さんの書きおろしコラム「おとうさんの扉」5本つき。

 

 重たい洋書を立て続けに読んでいたので、心を軽くするために育児漫画を。

吉田戦車さんの奥様であり同じく漫画家、伊藤理佐さんが子供を産んでから約2年間の育児奮闘記を4コマで描いた作品です。

伊藤理佐さん、名前しか知らず読んだのは初めてでしたが、絵もユーモアもすごく素敵でした。

ママはテンパリスト - bookworm's digest』ほどの衝撃(笑撃)はなかったものの、子どもが産まれ育っていく過程で感じる感動と、漫画家ならではのブラックな切り口が共存していました。

 

とにかく笑ったのは中盤に畳み掛けられた「たこ焼きマンヴォ」事件、、笑

母親が「たこ焼きー」と言うと、赤ちゃんが「マンヴォ!」と応答してくれるという可愛らしいエピソードですが、時に赤ちゃんに裏切られたり、「たこ焼き」無くとも初めて「マンヴォ!」と言ったり、など、いろんなバリエーションを全て4コマに構成しているのが素晴らしい!

赤ちゃんの行動って本当に想像の斜め上なので、理解不能な行動を取っているのを見たときの「あぁ!この理解不能な可笑しさを誰かと共有したい!」と言った気持ちをしょっちゅう味わうのですが、こうやって漫画家が進んで描いてくれると、「分かるわ〜!」と共感できてニマニマしてしまいます。

 

 

ただ他の方のレビューを読む限り、伊藤理佐しん、出産前の作品はもっと鋭い切り口らしく、「らしくない」「やはり出産は人を丸くする」など辛辣なレビューが並んでいました。

私は初著者だったので楽しく読めましたが、伊藤理佐さんを知るには他の作品も読んでみる必要がありそうです。

 

 

 

独りでいるより優しくて

 

独りでいるより優しくて

独りでいるより優しくて

 

 

『独りでいるより優しくて』   /    イーユンリー

 

★    ×    88

 


内容(「BOOK」データベースより)
一人の女子大生が毒を飲んだ。自殺か、他殺か、あるいは事故なのか。事件に関わった当時高校生の三人の若者は、その後の長い人生を毒に少しずつ冒されるように壊されていく―凍えるような孤独と温かな優しさを同時に秘めたイーユン・リーの新作長編。

千年の祈り(2013/4/13投稿) - bookworm's digest』『黄金の少年、エメラルドの少女 - bookworm's digest』以来、2年ぶりのイーユンリーさん。

前2作はいずれも短編だったので長編は今回が初、更にあらすじだけを読むと「え、ミステリー!?」と読む前からいろいろ想像して読み始めましたが、

やはりイーユンリーさん、読んでる時、読んだ後の、窓から見える景色を薄めで眺めたくなるような虚無感(なんだそりゃ)を何度も味わって、オンリーワンだなぁと感激しました。

 

あらすじは前述の通りで、長い間病床にいた後に亡くなった少女に関係する友人3人の視点から描かれる物語。

物語の大半は少女が亡くなってから20年経過したのちの3人から語られていますが、作中何度も学生時代など過去のシーンを行き来します。

3人は少女の死後、それぞれ全く異なる環境で時間を過ごしており、対面で会うことなく、けれど少女の死は心のどこかに常駐しています。

 

その死がチラつくからか、はたまたこれまでの作品同様著者のオンリーワンからかは分かりませんが、物語は初めから終わりまでずっと物悲しい。

けれどその物悲しさって、何も作中の3人だから特別にあるものでなくって、読んでるこっち側にも同じようなやるせなさあるよねって語りかけてくるようでした。

語りかけてくるのは勿論小説の裏側にちらつくイーユンリーさん自身で、話の展開とは別に、登場人物の心情描写に乗って何度も何度も襲ってきます。

 

答えに興味はなかったが、質問をすると相手への支配力が得られるのを知っていた。人々は答えを言う瞬間、質問者から評価される立場にあることを知らない。

 

恥をかかせたい衝動や辱めたい衝動は、優しくしたい衝動と変わらないほど当てにならないものだ。どんな感情も他者を、こちらが設定していた立場から引き離すから。

 

一文一文を自分の鉛筆で改めて書き下して咀嚼したいほど哲学めいたもので、けれど小説というプロットを追うジャンルであることもあり(ページ数が多いこともあり、、)、分かったような気になって読み進めましたが、

 

最後の最後、起伏のなかったそれまでを晴らすように、3人のうち2人が遂に対面します(この、全員じゃなく2人ってのもまた憎いですが)。

しかもここでも、結局事件の真相が完全には明かされないまま小説は終わってしまいます。

このボリュームで幾度となく繰り返される3人の心情描写がありつつも、物語自体はほぼファジーなまま。ポツンと取り残されたような感覚でした。 

けど、このかんじ、『黄金の少年、〜』でも味わったこの感じがオンリーワンなんだろうなぁ。

たまに著者の作品に触れることは、ドタバタしている日常を正してくれるようで、大事なことだと感じました。オススメ!

 

 

刑事ファビアン・リスク 顔のない男

 

刑事ファビアン・リスク 顔のない男 (ハーパーBOOKS)

刑事ファビアン・リスク 顔のない男 (ハーパーBOOKS)

 

 

 

『刑事ファビアン・リスク 顔のない男』   /    ステファンアーンヘム

 

★    ×    92

 

内容(「BOOK」データベースより)
休日の教室で両手を切断された男の死体が見つかった。傍らには男の写る30年近く前のクラス写真が残され、時を置かず別のクラスメートも凄惨な死を遂げる。容疑者はかつてクラスで壮絶ないじめを受けていた人物。数年前、その足取りは忽然と消えていた。一人また一人と犠牲者が増えるなか、自らも同級生である担当刑事リスクは恐るべき罠に嵌っていき―。本年度最注目の北欧ミステリー!

 

何かのレビューで見かけて気になっていた本作。

記憶している限り北欧の小説は読んだことがなかったですが、いやはや、、、なかなかにトンデモでした。

文庫で600ページというボリュームですが、特に後半にかけてのページターナーっぷりは圧巻のサイコサスペンスでした!

 

 

あらすじは特段珍しいものでなく、かつてのクラスメートが次々と殺されていき、主人公ファビアン・リスクが警察として元クラスメートの誰が犯人かを追っていくというもの。

犯行動機もありきたりで、かつてのいじめられっ子が、かつてのいじめっ子、及びはたで見ていたその他大勢に仕返しをしていくという設定でストーリーは進みます。

ただしありきたりな設定の中でアイキャッチの1つとして、被害者それぞれがどうやっていじめを行なっていたか、その特性に沿って犯行が実行されているという点があります。

例えばメリケンサックで殴ってきた奴に対しては両腕を切断し、

例えば口で攻撃してきた奴に対しては舌を引っこ抜き、、

といった多様な殺害方法、非常に凄惨なのですが、映画『SAW』をなんだかんだ全作観ちゃった感覚と同じ、怖いもの見たさで脳が刺激されちゃってる良くないモードだとはわかりつつも、興味深く読み進めちゃう自分を止められませんでした。

 

 

んで、も1つ『SAW』(特に1と2)を観た時と同じで、凄惨な描写の中にもちゃんと伏線が張られていて、ミステリーとしてガッツリのめり込めるのも魅力の1つと感じました。

特に第1部の最後、実は追っていた犯人が全く別人であったことが分かってから第2部に入ってからは、ジェットコースター的に全く展開が読めず、読んでいる最中ずっとドキドキしていました。

個人的には犯人の指紋を突き止めるシーン、そしてファビアンの息子が拐われてからのラストまでが最も濃密で、ミステリーとしても素晴らしい完成度と思います(これはデビュー作だそうですが、、)。

ところどころ、あまりにも完全犯罪すぎるところ(病院での犯行やカメラでの誘導はいくらなんでも出来過ぎ)が引っかかりもしましたが、それよりも恐怖と好奇心が勝り、終わってみれば素晴らしかったという感想しか残らない。

※ あ、北欧の名前が覚えにくすぎるという感想もあったりしますが。。

 

映像化もされるようですがそりゃそうだろなという感じ。グロも混ぜたキャッチーな作品になるだろうと思います。

オススメ!!

 

 

 

 

とんび

 

とんび (角川文庫)

とんび (角川文庫)

 

 

『とん』   /    重松清

 

★    ×    86

 

内容(「BOOK」データベースより)
昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう―。アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。魂ふるえる、父と息子の物語。

 

 

私事ながら昨年子どもが産まれたのですが、昔からやってみたかったことの1つとして「子どもが産まれてから重松清を読む」というのがあります。

中学・高校時代に片っ端から読んだ重松さん、家族を持っていない身だったにも関わらず親心分かったような気がしていた昔の感覚が、歳をとってからどう変化するのか楽しみで、大好きだった『きみのともだち』『ナイフ』などは家にとってあります。

本作は初めて読みましたが、男手一人で息子を育てるヤスさんという男性が主人公。

少しまだ読むのが早かったかもしれませんが、ヒッサビサの重松さん節を感じられて良かったです。

 

 

ヤスさんは美佐子さんという素敵な奥さんを、息子のアキラがまだ小さい時に亡くしてしまいます。

その後は男手一人という環境に苦労しつつ。多くのともだちに助けられながら、アキラを大学に入学させるまで立派に育てます。

ヤスさんはあとがきにもあるように、とにかく無骨、酒飲んで拳で語り合って人目憚らず涙を流す男。時代設定が少し古いので今の父親像からは少し離れていますが、それでもグッとくる場面はいくつかありました。

 

終盤、息子のアキラに子どもができたと打ち明けられるシーン。

アキラの奥さんの由美さんは離婚歴があり、アキラには既に健介という連れ子がいる状態なので、ヤスさんにとっては今回の子どもが、血の繋がった初めての孫ということになります。

アキラは当然、健介も生まれてくる孫も我が子であり、平等に愛することをヤスさんに言いますが、ヤスさんは「寂しい思いをさせてはダメだ」ということを主張し、もしアキラが生まれてくる子を一番愛したとしても、健介は自分が一番愛するから大丈夫ということを言います。

無骨な性格ながら、アキラを育てる過程で家族にとって何が大切かということを導き出すヤスさんの成長物語という意味で、後半の方が熱が上がってきました。

 

 

ただ、、、まあ久々に重松さんを読んだというのもありますが、とにかく登場人物たちが何度も涙を流す(家族ものという設定上なおさらかもしれませんが、)ところがちょっと味濃すぎというかお腹膨れるというか、途中で微妙に飽きてしまう感覚がありました。

心が汚れた大人になってしまった感があって若干悲しくなりました、、

もっと歳をとるとまた昔のような感覚になるのでしょうか、、

一番好きな『きみのともだち』は、もうしばらく温めておこうと思います。