bookworm's digest

主に本についてのレビューや、、、その他

記事一覧 ブログ内ランキング 本棚

2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
tacbonaldの本棚




もういちど生まれる

 

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

 

 

『もういちど生まれる』   /    朝井リョウ

 

★    ×    88

 

内容(「BOOK」データベースより)
彼氏がいるのに、親友に想いを寄せられている。汐梨、平凡な日常と、特徴のない自分に飽き飽きしている。翔多、絵を通して、壊れた家族に向き合おうとする美大生。新、美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生。梢、才能の限界を感じつつも、バイトをしながらダンス専門学校に通う。遙。あせりと不安を力に変えた5人が踏み出す“最初の一歩”。

 

久々の朝井リョウさん。

少女は卒業しない - bookworm's digest』という恋愛小説を3年前に読んだ時、著者の描く等身大のロマンチックさにヤラレたものですが、齢30目前で同じ著者の恋愛小説に果たしてヤラレる程心澄んだままかなと不安でしたが、

杞憂でした、さすが朝井さん、キュンッキュンでした!

いやぁー恋愛小説って素晴らしい。。

 

 

短編集ですが、どの物語も19歳という「大人子ども」がメインで、そして各編が緩やかに繋がった連作短編集になっています。

どれも登場人物たちの強がりだったり妬みや嫉み、弱さ、

重松清さんが小中学時代に誰もが持っていた痛々しさを描く代表なら、朝井リョウさんはこの「大人子ども」時代を描く代表のように思います。

あまりにリアルで、読んでいてどうしても主人公に自分を投影しちゃうし、その痛々しさが恥ずかしくて読むのやめたくなっちゃう、そんな感じです。

 

特に好きなのは2話目『燃えるスカートのあの子』と最終話『破りたかったもののすべて』のリンクの仕方。

前者では翔多というちょっとおバカな大学生が、椿という高嶺の花に恋愛する話で、合間合間にハルというバイト仲間が出て来ます。

んで、後者はハルが第一人称の物語。つまり、前半だけでは分からなかったハルの心情描写を後半に暴いていく構成になっています。

 

前半では翔多のおバカ加減がコメディ調で描かれており、ハルは要所要所でそんな翔多に的確なサポートを施していて、「カッコいい友人像」を担当していますが、

後半で実はハルこそ翔多に支えられている(というか恋愛感情を持っている)ということがわかり、ああ前半のハルのセリフにはこんなにも切ない感情が隠されていたんだってことが後追いで理解できる。

しかも終わり方はすごくすごく切なく、何もかもうまくいってそうな「カッコいい友人像」ハルはダサくて、人間味たっぷりで、人それぞれいろいろあるよなぁという当たり前の感想を抱きました。

けど、この当たり前、誰しも抱いたことのある既視感を描写するのがうますぎて!(あ、重松清さんもそうですが)、、

 

大学時代って自分では大人だと思ってましたが、今よりも物事をまっすぐ考える力とか感受性とか強かっただろうし、

今は大きな面倒に対してやんわりと避ける力がついたから物語のようなやるせない気持ちになることは無くなってしまいましたが、

「大人子ども」の彼らを見ているとあぁ学生時代って戻りたいようで戻りたくない!みたいなうずうず感が止まりませんでした、、

ピーターパンな大人たちは必読の小説と思います!

 

 

あきらめない

 

 

あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ (日経WOMANの本)

あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ (日経WOMANの本)

 

 『あきらめない』   /    村木厚子

 

★    ×    90

 

内容(「BOOK」データベースより)
「働く女性の希望の星」から一転、逮捕・164日間の勾留―。極限状態でも決して屈しなかったのはなぜか。その秘密が半生とともに今明かされる。

 

郵便不正事件で虚偽文書作成容疑で逮捕されるも、半年後に冤罪が認められ無罪となった著者、

役所の悪事っぷりが明るみに出たことで話題となったこの事件で、普段ほとんどニュースを知らない私でも著者の顔は分かります。

が、、恥ずかしながら事件の詳細はほとんど知らなかったので本作で学びました。

タイトルは何ともいただけないですが、、ただの自己啓発では終わらない、特に逮捕されてからの著者と家族の在り方にはいろいろ考えさせられました。

 

 

 中盤までは、村木さんが「普通の人のロールモデル」となれるよう如何に働いてきたかが描かれています。

当時は働くことが美徳とされたオラオラニッポンで、労働省厚生労働省)というお役所立場から働き方について正面から向き合っていて、

セクハラや残業規制など、今ある多くの制度を第一人者として関わっているのには驚きでした。

しかも好感が持てるのは、随所に見られる「普通の人のロールモデル」を目指したという著者の人柄。

いつも自信がなくて、分からないことは「分からない」と言う。

これまで読んだ勝間和代さんや南場智子さんや小島慶子さんなどが書かれた「働く女性の〜〜」系読書で見られたのは、とにかく対男性で奮闘する、ダイバーシティとか言いながら結局は男と同じ量働けと見えてしまうような女性像が多かったのですが(というか俺がそういう本しか読んでなかったのかもしれませんが)、村木さんはちょっと違った角度でワークライフバランスを語っていて面白かったです。

 

 

で、後半の逮捕されてからの半年間の描写、ここからガラッと毛色が変わります。

簡単に言うと、大きな力により騙されて逮捕されたのですが、中盤まで同様、村木さんの優しい口調で淡々と一部始終を語っているので逆に怖さが際立ってるという、、笑

国の人間が国の人間を陥れるという構図であり、自分が見ている世界が正しいことばかりでないということをまざまざと突きつけられます。

興味深いのは、騙した検事側、騒ぎ立てたメディア側に対し、村木さんからは終始憤りを感じられなかったことです。

ひどい仕打ちを受けたにもかかわらず、村木さんは一貫して「私は悪いことをやっていないから堂々としている」ことを心がけている。

読書して、たくさん寝て、掃除もして、拘留されていても村木さんだし、村木さんの家族も同様、旦那さんは出張へ、娘は修学旅行へ行くという、

圧倒的な信頼感で成り立っている。これはなかなかできないことだと思います。

 

 

時間の裏側には本書には出てこない、 苦しいドラマはたくさんあったでしょうが、それを感じさせない強さには感動しました。タイトルはやっぱりアレですが、中身は万人にオススメです!

 

 

あきない世傳 金と銀 源流篇

 

あきない世傳 金と銀 源流篇 (時代小説文庫)

あきない世傳 金と銀 源流篇 (時代小説文庫)

 

 

 

『あきない世傳 金と銀 源流篇』    /    高田郁

 

★    ×    86

 

内容(「BOOK」データベースより)
物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道か―大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!

 

 

みをつくし料理帖』がすごいと何かと評判な高田郁さん、ずっと読みたいと思っていましたが、あちらのシリーズは非常に長いため、新シリーズのこっちを読んでみました。

が、こっちも中々続いていきそう。。ついて行けるかな、、

超久々の時代小説でしたが、読ませる平易な文章で楽しめました。

 

主人公、幸は、飢饉の時代に一人呉服屋に奉公へ出された女の子。

大坂という馴染みない土地で、見知らぬ人と共に商売を学んでいくストーリー。

幸の才を見出す者、幸と仲が良いのに別れなければならなかった者、幸との今後の恋愛を匂わす者、、

もう、そのままそっくり朝の連ドラに移せるような、典型的な成長物語です。

(時代小説って何かこういう、ド型にハマった構成のイメージが強く、それが私が若干苦手なポイントです、、いや、捻くれた私が悪いのですが)

 

時代背景はほぼ江戸ということですが、本作品のテーマは今で言う「女性の在り方」。

この時代に女性が商いをする(この篇では未だですがいずれするのでしょう)ことが異例だとされていたり、

別の登場人物の女性が、早く子供を作れというプレッシャーに耐え兼ねて家を出ていくシーンがあったりなど、

現代にも通ずる女性の在り方の難しさが描かれていて、そこが本作の読みやすい点だと思います。

「みおつくし〜」の方もそうなんでしょうか?

 

 

ただ1つだけ不満を言わせていただきたいのが、、

本作、当然この1冊では終わらず、まだまだ続いていくぜとばかり、ものすごい途中で終わるのですが、

あまりにも何にも片付いていない。

1冊の本として世に出る以上、たとえその先続いていくとしても、1冊の中で何かしらの着地はして欲しいと思うのですが。。

それとも時代小説って基本的にこのスタンスなんでしょうか。。

勿論続編も読もうと思いますが、小説を漫画のように連続的に読んでいく習慣のない私には少しクリビツな終わり方でした。

 

 

 

 

クラインの壺

 

クラインの壷 (新潮文庫)

クラインの壷 (新潮文庫)

 

 

クラインの壺』   /     岡嶋二人

 

★    ×    85

 

内容(「BOOK」データベースより)
ゲームブックの原作募集に応募したことがきっかけでヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることになった青年、上杉。アルバイト雑誌を見てやって来た少女、高石梨紗とともに、謎につつまれた研究所でゲーマーとなって仮想現実の世界へ入り込むことになった。ところが、二人がゲームだと信じていたそのシステムの実態は…。現実が歪み虚構が交錯する恐怖。

 

量子革命 - bookworm's digest』で3週間ほど量子の世界にズブズブになって疲れていたので、ちょっとエンタメをと思い、不朽のミステリーと呼ばれる本作を読みました。

岡嶋二人さん、『99%の誘拐』を大昔に読んで以来多分2回目でしたが、何となくこんな文体だったなぁというのを思い出しました。

 本作はかなりゲームに依った話で個人的にはそこまでハマりませんでしたが、本作が出た20年前を考えると脱帽するしかない先見性で驚きました。

 

とある会社が開発した「クライン2」という試作ゲームの原作者である上杉が主人公。

上杉、そしてアルバイトとして応募してきた梨沙の2人は、治験としてクライン2を実践します。

クライン2とは簡単にいうと「全身VR」。

HMDで視覚を覆って仮想現実を体験するのが現代なら、全身をHMDで包んで、視覚のみならず痛覚や嗅覚もすべて仮想現実にし、ゲームの世界に体ごと置かれた感覚でゲームを進めるのがクライン2です。

今でこそ民生品でもメジャーなVRの世界なのでイメージは難くないですが、本作は1980年代に出たということにまあ驚き!

いとうせいこうさんの『ノーライフキング - bookworm's digest』を読んだ時も時代先取り感に圧倒されましたが本作も同様。

これをリアルタイムの時代に読んでいたら、もっと想像が膨らんでより楽しめただろうなぁと思います。

 

 

んであらすじは、次第にゲームの世界と現実を区別できなくなっていくという、これまた現代だと本でも映画でもまあよくある展開で、現代に読んだ私には決して新鮮なものでは無かったですが、

何度も言うように「30年前に読んでいたら、、」というやつです。(以下省略

 

 

不朽のミステリーとは、当時誰もなし得なかった新しさ故なのでしょう。

ゲーム性高いストーリーが好きな人は文句無しで楽しめる小説と思います。

 

量子革命

 

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)

 

 

 

『量子革命』    /    マンジットクマール

 

★   ×    93

 

内容(「BOOK」データベースより)
20世紀に生まれた量子論は、ニュートン以来の古典的な世界像をいかにして一変させたのか?ノーベル賞受賞者たちの人間ドラマとその思考の軌跡を、舌を巻く物語術で描き切った驚異のポピュラー・サイエンス。量子の謎に挑んだ天才物理学者たちの100年史。

 

 

フェルマーの最終定理 - bookworm's digest暗号解読<下> (1) - bookworm's digest』などで、著者サイモンシンさんの唯一無二さを知ったと同時に、青木薫さんという、数学なぞ難解な分野でまさかの心躍らせてくれる訳を与えてくれる訳者さんも知り、一時期数学ロマンに精神ヤられた私ですが、

久々にどっぷり浸かりたいと思い、同じく青木薫さん訳である本書を手に取りました。

 

 

量子力学

 

学部の授業で基礎的な知識は学んだものの、本質を知るまでには至らず、結局は教えられた方程式を解いて何とか単位を取れた記憶しかないこの分野、

けれど時たま聞こえてくるこの理解しがたい世界(シュレーディンガーの猫 - Wikipedia なんて厨二の賜物)が青木薫さんにかかれば果たしてどうなるかと期待して読みましたが、

やっぱサイコー!!!ノンフィクションなのにエンタメすぎ!!!!

  

 

 本作は、過去長年に渡って完全な理論として君臨していた古典力学が、量子の世界では成り立たないという事実の発覚から、「量子力学」という1つの分野に立つまでの偉人たちの苦悩を描いたノンフィクション。

古典力学とは、学生時代誰もが習った「慣性の法則」「運動方程式」など、物体の速度や位置や運動量が一意に決まるという、あのニュートン様が打ち立てた絶対的な法則などを指します。

普段生きてて目にするものは全てこれに則ってますし、だから野球選手はフライをキャッチできるし、私は自転車を転ばずに運転できる。

ただし量子の世界、原子よりも小さい宇宙においてはこれが成り立たない。

例えばある時刻に秒速 1m/s で動く物質は、1秒後に 1m 進んでいるハズですが、

量子は違います。1秒後にどこにいるかは誰も分からないし、かと言って1秒後に 1m 進んだところにいる可能性もある。

という、もう一休さんの屁理屈のような世界で非常にキャッチーなんですが、ちょっと数式を覗くともうお手上げ、ザックリ言うとそんな分野と思います。

 

この分野が生まれる時に活躍した偉人として、教科書でも習ったようなシュレディンガーディラック、パウリ、ハイゼンベルク、ボルンといった錚々たる若手(そう、当時みんな24歳とかなんですよね、、まずそのことにおじさん驚きでした)たちが、瞬間移動し続ける量子に翻弄されながらも、観測と思考実験を繰り返して真実を見出して行く様が、序盤から中盤にかけてタップリと解説されています。

中身が非常に濃く、はっきり言ってかなり疲れるのですが、時折現れる青木薫さんの

時間と空間は堅い枠組みであり終わりのない舞台

 ニュートンの宇宙は完全なる決定論の世界であり、そこに偶然の出る幕は無い

などといったかっこよすぎる表現に何度もヤられながらなんとか読み進めているうち、

 

後半、「不確定性原理」という、想像の斜め上を行く理論が浮上したのち、古典物理学から量子力学へにわかに倒れ出していくスピード感は圧巻!!

不確定性原理は簡単に言うと、

 

「量子の世界は目に見えてるものがすべて。それ以外は知らない。」

 

という何とも投げやりな原理。

つまり科学者たちがスーパー分解能の測定機器をふんだんに使ったとしても、観測と観測の狭間には人間には見ていない世界があり、そこでの量子の振る舞いは神のみぞ知るというもの。

量子は波(連続的なもの)でも粒(離散的なもの)のどちらか一方のみの性質ではなく、どちらの性質も以って初めて完成するという、

数学でいう「解: 解なし」と言った肩透かしを、絶対論として信じられていた物理学の世界でも打ち立てたのが、この量子力学です。

 

んで後半、知の巨人たちが一堂に会した「コペンハーゲン解釈」と呼ばれる会議が本作のハイライト。

ここでは、前述のスーパーエリートたちの更に頂点に君臨する、ボーアとアインシュタインの対決が描かれています。

ボーアとは量子力学のいわゆる番長で、基礎を作り上げた量子界のドン。

一方アインシュタインは言わずもがな、相対性理論という、これまた物理の常識を根底から覆す理論を打ち立てた天才中の天才。

会議ではボーアの量子論に対し、アインシュタインがその矛盾を突く思考実験をぶつけ、それに対しボーアが再び量子論で打ち砕くという、知と知のぶつかり合いが幾度となく描かれています。

正直一般的には舌を出すアインシュタインの無邪気な写真が先行していますし、ボーアよりも知名度が高いですが、そのアインシュタインを両手広げて全力で迎え撃ち、自分が打ち立てた量子論で以って最終的に制止続けるという姿がカッコよすぎるし、

アインシュタインの、既に富も名声も得た科学者が、何度も説き伏せられながらも、負けず嫌いの子どものように再び別の視点から立ち向かって行く姿がカッコよすぎるし、

この2人の闘いもずっと見ていたいという、アクション映画鑑賞中みたいな気持ちになりました。(あ、議論自体は難解すぎて半分も理解できませんでしたが笑)

 

 

1つの学問が生まれる過程でこんなにも知の巨人たちがぶつかり合い、苦悩し合ってこの世の真実を暴いていくというのは、量子力学に限らず様々は分野で行われてきたイニシエーションなんでしょう。

事実は小説よりも奇なりとは良く言ったもので、小説家がどんなに奇をてらった展開を思いついたとしても、ノンフィクションを越えてこないということをまざまざと思い知らされました。

理系の方、そして興味のない文系の方も理解しがたいなりに読んで欲しい超エンタメ作品でした!