『もういちど生まれる』 / 朝井リョウ
★ × 88
内容(「BOOK」データベースより)
彼氏がいるのに、親友に想いを寄せられている。汐梨、平凡な日常と、特徴のない自分に飽き飽きしている。翔多、絵を通して、壊れた家族に向き合おうとする美大生。新、美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生。梢、才能の限界を感じつつも、バイトをしながらダンス専門学校に通う。遙。あせりと不安を力に変えた5人が踏み出す“最初の一歩”。
久々の朝井リョウさん。
『少女は卒業しない - bookworm's digest』という恋愛小説を3年前に読んだ時、著者の描く等身大のロマンチックさにヤラレたものですが、齢30目前で同じ著者の恋愛小説に果たしてヤラレる程心澄んだままかなと不安でしたが、
杞憂でした、さすが朝井さん、キュンッキュンでした!
いやぁー恋愛小説って素晴らしい。。
短編集ですが、どの物語も19歳という「大人子ども」がメインで、そして各編が緩やかに繋がった連作短編集になっています。
どれも登場人物たちの強がりだったり妬みや嫉み、弱さ、
重松清さんが小中学時代に誰もが持っていた痛々しさを描く代表なら、朝井リョウさんはこの「大人子ども」時代を描く代表のように思います。
あまりにリアルで、読んでいてどうしても主人公に自分を投影しちゃうし、その痛々しさが恥ずかしくて読むのやめたくなっちゃう、そんな感じです。
特に好きなのは2話目『燃えるスカートのあの子』と最終話『破りたかったもののすべて』のリンクの仕方。
前者では翔多というちょっとおバカな大学生が、椿という高嶺の花に恋愛する話で、合間合間にハルというバイト仲間が出て来ます。
んで、後者はハルが第一人称の物語。つまり、前半だけでは分からなかったハルの心情描写を後半に暴いていく構成になっています。
前半では翔多のおバカ加減がコメディ調で描かれており、ハルは要所要所でそんな翔多に的確なサポートを施していて、「カッコいい友人像」を担当していますが、
後半で実はハルこそ翔多に支えられている(というか恋愛感情を持っている)ということがわかり、ああ前半のハルのセリフにはこんなにも切ない感情が隠されていたんだってことが後追いで理解できる。
しかも終わり方はすごくすごく切なく、何もかもうまくいってそうな「カッコいい友人像」ハルはダサくて、人間味たっぷりで、人それぞれいろいろあるよなぁという当たり前の感想を抱きました。
けど、この当たり前、誰しも抱いたことのある既視感を描写するのがうますぎて!(あ、重松清さんもそうですが)、、
大学時代って自分では大人だと思ってましたが、今よりも物事をまっすぐ考える力とか感受性とか強かっただろうし、
今は大きな面倒に対してやんわりと避ける力がついたから物語のようなやるせない気持ちになることは無くなってしまいましたが、
「大人子ども」の彼らを見ているとあぁ学生時代って戻りたいようで戻りたくない!みたいなうずうず感が止まりませんでした、、
ピーターパンな大人たちは必読の小説と思います!