bookworm's digest

33歳二児のエンジニアで、日記をずらずら書いていきます

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2015/09/20 『孤独か、それに等しいもの』 / 大崎義生
2015/09/17 『今日を歩く』 / いがらしみきお
2015/09/16 『ケンブリッジ・クインテット』 / ジョン・L・キャスティ
2015/09/06 『裸でも生きる2』 / 山口絵理子
2015/09/02 『数学的にありえない(下)』 / アダム・ファウアー
2015/08/30 『だから日本はズレている』 / 古市憲寿
2015/08/28 『数学的にありえない(上)』 / アダム・ファウアー
2015/08/18 『僕は問題ありません』 / 宮崎夏次系
2015/08/16 『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
2015/08/13 『ワイフ・プロジェクト』 / グラム・シムシオン
2015/08/13 『伊藤くんA to E』 / 柚木麻子
2015/07/30 『断片的なものの社会学』 / 岸政彦
2015/07/25 『雨のなまえ』 / 窪美澄
2015/07/22 『愛に乱暴』 / 吉田修一
2015/07/19 『ナイルパーチの女子会』 / 柚木麻子
2015/07/15 『ひらいて』 / 綿矢りさ
2015/07/13 『るきさん』 / 高田文子
2015/06/24 『装丁を語る。』 / 鈴木成一
2015/06/16 『春、戻る』 / 瀬尾まいこ
2015/06/13 『かわいそうだね?』 / 綿矢りさ
2015/06/12 『未来国家ブータン』 / 高野秀行
2015/06/09 『存在しない小説』 / いとうせいこう
2015/06/02 『帰ってきたヒトラー』 / ティムールヴェルメシュ
2015/05/31 『流転の魔女』 / 楊逸
2015/05/21 『火花』 / 又吉直樹
2015/05/19 『あと少し、もう少し』 / 瀬尾まいこ
2015/05/17 『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります』 / 古市憲寿、上野千鶴子
2015/05/02 『切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 / 佐々木中
2015/04/26 『恋するソマリア』 / 高野秀行
2015/04/25 『アル中ワンダーランド』 / まんしゅうきつこ
2015/04/23 『レンタルお姉さん』 / 荒川龍
2015/04/17 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 / J.D.サリンジャー
2015/04/12 『しょうがの味は熱い』 / 綿矢りさ
2015/04/07 『ペナンブラ氏の24時間書店』 / ロビン・スローン
2015/03/26 『せいめいのはなし』 / 福岡伸一
2015/03/25 『やりたいことは二度寝だけ』 / 津村記久子
2015/03/21 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下)』 / 増田俊也
2015/03/14 『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
2015/03/06 『元職員』 / 吉田修一
2015/02/28 『黄金の少年、エメラルドの少女』 / Yiyun Li
2015/02/23 『太陽・惑星』 / 上田岳弘
2015/02/14 『迷宮』 / 中村文則
2015/02/11 『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
2015/02/08 『斜光』 / 中村文則
2015/02/04 『この人たちについての14万字ちょっと』 / 重松清
2015/01/27 『名もなき孤児たちの墓』 / 中原昌也
2015/01/18 『満願』 / 米澤穂信
2015/01/15 直木賞
2015/01/15 『Hurt』 / Syrup16g
2015/01/14 『地下の鳩』 / 西加奈子
2015/01/10 『きょうのできごと』 / 柴崎友香
2015/01/05 『月と雷』 / 角田光代
2015/01/02 『カワイイ地獄』 / ヒキタクニオ
2014/12/31 『死んでも何も残さない』 / 中原昌也
2014/12/30  2014年ベスト
2014/12/18 『サラバ!下』 / 西加奈子
2014/12/13 『サラバ!上』 / 西加奈子
2014/12/12 『できそこないの男たち』 / 福岡伸一
2014/12/4 『ザ・万歩計』 / 万城目学
2014/12/1 『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
2014/11/25 『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
2014/11/19 『勝手にふるえてろ』 / 綿矢りさ
2014/11/13 『ジャージの二人』 / 長嶋有
2014/11/6 『8740』 / 蒼井優
2014/11/5 『計画と無計画のあいだ』 / 三島邦弘
2014/10/31 『問いのない答え』 / 長嶋有
2014/10/29 『ジュージュー』 / よしもとばなな
2014/10/20 『Bon Voyage』 / 東京事変
2014/10/17 『女たちは二度遊ぶ』 / 吉田修一
2014/10/15 『カソウスキの行方』 / 津村記久子
2014/10/10 『69(シクスティナイン)』 / 村上龍
2014/10/3 『論理と感性は相反しない』 / 山崎ナオコーラ
2014/9/28 『最後の家族』 / 村上龍
2014/9/25 『グラスホッパー』 / 伊坂幸太郎
2014/9/23 『エヴリシング・フロウズ』 / 津村記久子
2014/9/13 『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
2014/8/23 『西加奈子と地元の本屋』 / 西加奈子・津村記久子
2014/8/10 『蘇る変態』 / 星野源
2014/8/4  『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
2014/7/31 『マイ仏教』 / みうらじゅん
2014/7/23 『オールラウンダー廻』 / 遠藤浩輝
2014/7/17 『ゴールデンスランバー』 / 伊坂幸太郎
2014/7/16 『百万円と苦虫女』 / タナダユキ
2014/7/8  『人生エロエロ』 / みうらじゅん
2014/6/28  駄文・本を読まない場合
2014/6/8  『平常心のレッスン』 / 小池龍之介
2014/6/5  『僕らのごはんは明日で待ってる』 / 瀬尾まいこ
2014/5/27 『泣き虫チエ子さん』 / 益田ミリ
2014/5/25 『動的平衡2 生命は自由になれるのか』 / 福岡伸一
2014/5/14 『春にして君を離れ』 / アガサ・クリスティー
2014/5/9  『統計学が最強の学問である』 / 西内啓
2014/5/1  『不格好経営』 / 南場智子
2014/4/27 『きみの友だち』 / 重松清
2014/4/22 『善き書店員』 / 木村俊介
2014/4/15 『人生オークション』 / 原田ひ香
2014/4/8  『疲れすぎて眠れぬ夜のために』 / 内田樹
2014/4/1  『戸村飯店 青春100連発』 / 瀬尾まいこ
2014/3/28 『完全なる証明』 / Masha Gessen
2014/3/22 『渾身』 / 川上健一
2014/3/16 『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 / 見城徹、藤田晋
2014/3/12 『恋文の技術』 / 森見登美彦
2014/3/6  『国境の南、太陽の西』 / 村上春樹
2014/2/28 『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』 / 福岡伸一
2014/2/23 『雪国』 / 川端康成
2014/2/17 『ロマンスドール』 / タナダユキ
2014/2/15 『それから』 / 夏目漱石
2014/2/11 『悩む力』 / 姜尚中
2014/2/5  『暗号解読<下>』(1) / Simon Lehna Singh
2014/1/31 『暗号解読<上>』 / Simon Lehna Singh
2014/1/26 『脳には妙なクセがある』 / 池谷裕二
2014/1/19 『何者』 / 朝井リョウ
2014/1/15 『ポースケ』 / 津村記久子
2014/1/13 駄文・2013年と2014年の読書について
2014/1/8  『×と○と罪と』 / RADWIMPS
2013/12/29  2013年ベスト
2013/12/23 『骨を彩る』 / 彩瀬まる
2013/12/18 『愛を振り込む』 / 蛭田亜紗子
2013/12/11 『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』 / 菊池成孔
2013/12/4 『円卓』 / 西加奈子
2013/11/26 『暗い夜、星を数えて』 / 彩瀬まる
2013/11/24 『お父さん大好き』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/16 『BEST2』 / TOMOVSKY
2013/11/10 『人のセックスを笑うな』 / 山崎ナオコーラ
2013/11/9 『困ってるひと』 / 大野更紗
2013/11/4 『ジ・エクストリーム・スキヤキ』 / 前田司郎
2013/11/3 『こころの処方箋』 / 河合隼雄
2013/10/27 『朗読者』 / Bernhard Schlink
2013/10/24  駄文・フーリエ変換について
2013/10/16 『ノーライフキング』 / いとうせいこう
2013/10/11 『東京百景』 / 又吉直樹
2013/10/7 『社会を変える驚きの数学』 / 合原一幸
2013/10/4 『楽園のカンヴァス』 / 原田マハ
2013/9/29 『ともだちがやってきた。』 / 糸井重里
2013/9/28 『若いぼくらにできること』 / 今井雅之
2013/9/21 『勝間さん、努力で幸せになりますか』 / 勝間和代 × 香山リカ
2013/9/17 『シャッター商店街と線量計』 / 大友良英
2013/9/8  『ハンサラン 愛する人びと』 / 深沢潮
2013/9/7  駄文・読書時間について
2013/8/31 『幻年時代』 / 坂口恭平
2013/8/26 『人間失格』 / 太宰治
2013/8/21 『天国旅行』 / 三浦しをん
2013/8/17 『野心のすすめ』 / 林真理子
2013/8/7  『フェルマーの最終定理』 / Simon Lehna Singh
2013/8/4  『本棚の本』 / Alex Johnson
2013/7/31 『これからお祈りにいきます』 / 津村記久子
2013/7/26 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 / 山田詠美
2013/7/20 『殺戮にいたる病』 / 我孫子武丸
2013/7/15 駄文・どんでん返しミステリーについて
2013/7/15 『ツナグ』 / 辻村深月
2013/7/11 『岳物語』 / 椎名誠
2013/7/9  『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
2013/7/2  『工場』 / 小山田浩子
2013/6/25 駄文・スマートフォンの功罪について
2013/6/22 『ぼくは勉強ができない』 / 山田詠美
2013/6/15 『少女は卒業しない』 / 朝井リョウ
2013/6/12 『死の壁』 / 養老孟司
2013/6/7  『卵の緒』 / 瀬尾まいこ
2013/6/6  『一億総ツッコミ時代』 / 槙田雄司
2013/5/28 『うたかた / サンクチュアリ』 / 吉本ばなな
2013/5/24 『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
2013/5/20 『クラウドクラスターを愛する方法』 / 窪美澄
2013/5/17 『けむたい後輩』 / 柚木麻子
2013/5/13 『あの人は蜘蛛を潰せない』 / 彩瀬まる
2013/5/10 駄文・本と精神について
2013/4/30 『想像ラジオ』 / いとうせいこう
2013/4/22 『あなたの中の異常心理』 / 岡田尊司
2013/4/10 『千年の祈り』 / Yiyun Li
2013/4/5  駄文・文学賞について
2013/3/31 『今夜、すべてのバーで』 / 中島らも
2013/3/22 『何もかも憂鬱な夜に』 / 中村文則
2013/3/13 『生物と無生物のあいだ』 / 福岡伸一
2013/3/10 駄文・紙と電子について
2013/3/2  『ウエストウイング』 / 津村記久子
2013/2/24 『ブッダにならう 苦しまない練習』 / 小池龍之介
2013/2/16 『みずうみ』 / よしもとばなな
2013/2/8  『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
2013/2/3  『ワーカーズ・ダイジェスト』 / 津村記久子

工事中…

ブクログというサイトで読んだ本のログをつけています。
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デッドエンドの思い出

 

デッドエンドの思い出

デッドエンドの思い出

 

 

『デッドエンドの思い出』    /    よしもとばなな

 

★    ×    90

 

内容(「BOOK」データベースより)
つらくて、どれほど切なくても、幸せはふいに訪れる。かけがえのない祝福の瞬間を鮮やかに描き、心の中の宝物を蘇らせてくれる珠玉の短篇集。

 

小さないじわるを消すだけで - bookworm's digest』で久々によしもとばななさんに触れて、やっぱりこの人の感性はすごいなーと感じて読みたくなった、「最高傑作」と謳われた本作。

多分著者の本は10冊くらい読んだことありますが、『ツグミ』『みずうみ(2013/2/16投稿) - bookworm's digest』に次いでベスト3に入るくらい楽しめました。

 

 

全て女性が失恋した短編集で、各人なかなかに傷付いてはいるのですが、

それほどまでツラさを感じない理由は、主人公の周りには恋人がいなくなっても、支えになってくれる家族や男友達がなんだかんだで存在しててて、最後には暖かい感じになっているため。

もし現実世界で作中の主人公たち同様ズタズタに傷付いている人がいれば、その人から見れば「こんなに支えてくれる人いねえよ、恵まれやがって」なんてイラッとするのかもしれません。

けれど論点はそこじゃなくて、作中から伝わってくるのは「どんな絶望でも周りを見ればホラ!風が吹いてるよ」みたいな、要は当人の受け止め方次第で物事は変わるよ、ということでした。

 

それは随所に現れてて、例えば『幽霊の家』のワンシーン、

彼の気の優しさ、育ちのよさはいっしょに町を歩いているだけでよくわかった。子供が転べば「ああ、転んじゃった」という顔をするし、それを親が抱き上げれば「よかったなぁ」という表情になる。そういう素直な感覚はとにかく親から絶対的に大切な何かをもらっている人の特徴なのだ。

『デッドエンドの思い出』のワンシーン、

世の中には、人それぞれの数だけどん底の限界があるもん。俺や君の不幸なんて、比べ物にならないものがこの世にはたくさんあるし、そんなの味わったら俺たちなんてぺしゃんこになって、すぐに死んでしまう。けっこう甘くて幸せなところにいるんだから。でもそれは恥ずかしいことじゃないから。

 

こういった言葉を使って、落ち込んで視界が狭くなった人たちを著者が救おうとしている気持ちが伝わってくるので、それ即ち著者の人となりそのもので、結局よしもとさんすげえなーっていうとこに帰着しました笑

 

 

あと、主人公を救うべく現れるキャラ立った登場人物たちが妙に悟っていて、こんなこと現実で言う人いないだろうと若干訝しがりつつも、実際こんな人になりたいなぁと作品から啓発してくれる感じ、瀬尾まいこさんの作品にも通ずるところがありました。

結局はフィクションなのでどう頑張っても仮想世界ではあるんですが、下手にリアリティ出して中途半端より、こうやってちょっとファンタジーな人たちを描いた方が現実世界にフィードバックできるんだなぁというのも驚きです。

 

他にも高評価な過去の作品はいっぱいあるので読んでいこう。心が洗われました、オススメ!

 

 

ビニール傘

 

ビニール傘

ビニール傘

 

 

 

『ビニール傘』    /    岸政彦

 

★    ×    93

 

内容(「BOOK」データベースより)
共鳴する街の声―。絶望と向き合い、それでも生きようとする人に静かに寄り添う、二つの物語。第156回芥川賞候補作。気鋭の社会学者による、初の小説集。

 

 

断片的なものの社会学 - bookworm's digest』の著者、社会学者の岸政彦さん。

芥川候補に選ばれたのを知って、へー小説も書いていたのかと思いきや本作が初だそう。

表題作と『背中の月』の短編2作収録ですが、、、いやはや素晴らしく良かったです。ジャケ合わせてマスト買い!

 

 

特に表題作が素晴らしかった。

とある街のとある男女複数人の日常を描いたもの。

 男たちは現場の日雇いだったりタクシーの運転手だったり、

女はなんとなく大阪に出てきた水商売だったり美容師だったり。

冴えない日常に冴えない人柄で共感もクソもない、感情移入もし難い、第三者が第三者を語るような感じで終わりましたが、

本作の肝はその「匿名感」にあると個人的に思いました。

 

滝口悠生さんの『死んでいない者 - bookworm's digest』も同じでしたが、人称は同一人物かと思いきや知らぬ間に別の人物に変わっていて、それが感情移入しにくい所以。

語り手は勿論主人公で心情描写もあるんだけど、あくまで第三者から(この場合社会学者の著者が)街に生きる1人の人間を描いた、という構図になっているような気がして、何とも奇妙でした。

けど心地よい。

決してハッピーな展開ではないので、ずーっとキリキリと胸が痛むようで、小説でなくルポルタージュを読まされているような感覚でしたが、

日々辛いことがありながらも何とか生きてる人々って、ドラスティックな感情表現じゃなく本作くらい意外と低体温なんだよなぁと考えさせられました。

それが小説で成り立っているのがすごいと思います。

 

 あと個人的な嬉しみですが、物語の舞台となっているのが私の職場の半径500m以内のところで、要所要所で馴染みある地名や写真が挿し込まれているのが萌えました。

正に工業地区ってところに会社はあるので、言葉は悪いですが若干空気の煤けた、鼻をつくような臭いを小説からも感じました笑

 

 

2作目の『背中の月』は恋人を病気で亡くした男性が静かに崩壊していく物語で、こちらの方がどちらかと言えば小説的。

家の鍵を外から掛けて、家の中に投げ込んで「やっと2人になれたね」と言うシーンはなんとも切なく情景が浮かびましたが、

 

個人的にはやっぱ表題作が素晴らしいと思いました(2回目)。

社会学者の著者にしか書けない唯一無二の小説と思います、ありきたりな文章に飽きた人は是非!!

 

小さないじわるを消すだけで

 

 

 

『小さないじわるを消すだけで』    /    ダライ・ラマ14世よしもとばなな

 

★    ×    91

 

内容(「BOOK」データベースより)
生きにくさや孤独は、手放せる。“ノーベル平和賞受賞の宗教家”と“人々の心を癒し続ける小説家”による、決定的人生論。穏やかな心で良い人生を生きるための希望に満ちた金言集。

 

ダライ・ラマさんとよしもとばななさんの対談を本にまとめたもの。

無知な私はダライ・ラマさんがどういった人なのかほとんど知らなかったので、聞き手としてよしもとばななさんというこれ以上無い名手(糸井重里さんも良さそうですが)が選ばれていて、非常に興味深く読めました。

また、ネットのレビューで炎上している「新幹線の車掌問題」についてもいろいろ思うところがあったので以下にレビューします。

 

 

本書は前半によしもとばななさんの朗読、中盤に二人の対談、最後にダライ・ラマさんへのQ&Aの三部構成となっており、テーマはあまり一貫性がなく、只々2人が話したいことを話した、みたいな内容です。

だから1つ1つの答えに対して何かを得るというよりは、トータルで2人の人柄を学ぶような印象でした。

 

特にダライ・ラマさん、

個人的なほとんど知らなかったというのもありますが、勝手に人間以上・神様以下くらいのイメージを持っていましたが、本書から感じた人物像はものすごーーーーく感じのいいおじいさん(こんなこと言うと語弊ありますが、、)。

勿論私が知る由も無い壮絶な人生を送ってこられたのだと思いますが、発せられる言葉は平易で味が薄くて、けれど本質を突くようなものばかりで、スッと入ってくる感じがとても心地良かったです。

現時点の私が特に響いた言葉は下の2つ

正す手段が存在しているならば、何も心配することなく、正す努力をすればいい。しかしその問題に対して、何も手段がなければ、やはりそれ以上心配しても全く無意味である。

 

相手が自分に何かしてくれたり、優しくしてくれるから、愛するのであれば、もしいやなことをされたら、私たちはもう愛することができなくなってしまいます。

 

 

んで、ネットで賛否両論の「新幹線の車掌問題」。これは第一部の、よしもとばななさんの語りで出てくる実話です。

 

①新幹線に乗車したよしもとさんは、空いていた隣の席に自分の荷物を置いた。

②その後、疲れもあってそのまま寝てしまった。

③すると突然車掌に起こされ、ここに人が乗るはずだった人があなたのせいで他の座席に代わってもらったのですよ、と怒って去って行った。

 

以上が「新幹線の車掌問題」。これが、アマゾンのレビューなどでまーあ賛否両論。

「否」の人たちは「車掌は悪くない、荷物を置いたお前が悪い」の主張で、まあそれはおっしゃる通り、金を払っていない席を我が物顔で占有していたよしもとさんが100パーセント悪い。

それは、もう誰が見てもそうでしょう。

 

けど、本書で伝えたいことって、正しい正しくないじゃなくて、正しくないことに対してどう対応するかってことだと思うので、「否」の人たちは100パーセント間違ってないけど、本書の捉え方は100パーセント間違っている気がします。

タイトルにもある通り「ちいさないじわる」、この場合車掌さんの対応がそれに当たると思いますが、

占有していることについて怒るよりも、どうすれば全体満足が取れるか、そこに焦点を当てて考えれば自ずといじわるは無くなる、

そうやって世界は(少なくとも自分は)ちょっとずつ良くなっていく、そういう主張に思えます。

それを、正しくない自分を正当化してグチってる、などとレビューされた人は、この本から得られるものを全く捨てているようですごく損です(偉そうですみませんが)。

この問題については是非読んだ方と話して見たいなーと思います。

すごく読みやすいので是非手に取ってほしい1冊です。

 

もういちど生まれる

 

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

 

 

『もういちど生まれる』   /    朝井リョウ

 

★    ×    88

 

内容(「BOOK」データベースより)
彼氏がいるのに、親友に想いを寄せられている。汐梨、平凡な日常と、特徴のない自分に飽き飽きしている。翔多、絵を通して、壊れた家族に向き合おうとする美大生。新、美人で器用な双子の姉にコンプレックスを抱く浪人生。梢、才能の限界を感じつつも、バイトをしながらダンス専門学校に通う。遙。あせりと不安を力に変えた5人が踏み出す“最初の一歩”。

 

久々の朝井リョウさん。

少女は卒業しない - bookworm's digest』という恋愛小説を3年前に読んだ時、著者の描く等身大のロマンチックさにヤラレたものですが、齢30目前で同じ著者の恋愛小説に果たしてヤラレる程心澄んだままかなと不安でしたが、

杞憂でした、さすが朝井さん、キュンッキュンでした!

いやぁー恋愛小説って素晴らしい。。

 

 

短編集ですが、どの物語も19歳という「大人子ども」がメインで、そして各編が緩やかに繋がった連作短編集になっています。

どれも登場人物たちの強がりだったり妬みや嫉み、弱さ、

重松清さんが小中学時代に誰もが持っていた痛々しさを描く代表なら、朝井リョウさんはこの「大人子ども」時代を描く代表のように思います。

あまりにリアルで、読んでいてどうしても主人公に自分を投影しちゃうし、その痛々しさが恥ずかしくて読むのやめたくなっちゃう、そんな感じです。

 

特に好きなのは2話目『燃えるスカートのあの子』と最終話『破りたかったもののすべて』のリンクの仕方。

前者では翔多というちょっとおバカな大学生が、椿という高嶺の花に恋愛する話で、合間合間にハルというバイト仲間が出て来ます。

んで、後者はハルが第一人称の物語。つまり、前半だけでは分からなかったハルの心情描写を後半に暴いていく構成になっています。

 

前半では翔多のおバカ加減がコメディ調で描かれており、ハルは要所要所でそんな翔多に的確なサポートを施していて、「カッコいい友人像」を担当していますが、

後半で実はハルこそ翔多に支えられている(というか恋愛感情を持っている)ということがわかり、ああ前半のハルのセリフにはこんなにも切ない感情が隠されていたんだってことが後追いで理解できる。

しかも終わり方はすごくすごく切なく、何もかもうまくいってそうな「カッコいい友人像」ハルはダサくて、人間味たっぷりで、人それぞれいろいろあるよなぁという当たり前の感想を抱きました。

けど、この当たり前、誰しも抱いたことのある既視感を描写するのがうますぎて!(あ、重松清さんもそうですが)、、

 

大学時代って自分では大人だと思ってましたが、今よりも物事をまっすぐ考える力とか感受性とか強かっただろうし、

今は大きな面倒に対してやんわりと避ける力がついたから物語のようなやるせない気持ちになることは無くなってしまいましたが、

「大人子ども」の彼らを見ているとあぁ学生時代って戻りたいようで戻りたくない!みたいなうずうず感が止まりませんでした、、

ピーターパンな大人たちは必読の小説と思います!

 

 

あきらめない

 

 

あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ (日経WOMANの本)

あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ (日経WOMANの本)

 

 『あきらめない』   /    村木厚子

 

★    ×    90

 

内容(「BOOK」データベースより)
「働く女性の希望の星」から一転、逮捕・164日間の勾留―。極限状態でも決して屈しなかったのはなぜか。その秘密が半生とともに今明かされる。

 

郵便不正事件で虚偽文書作成容疑で逮捕されるも、半年後に冤罪が認められ無罪となった著者、

役所の悪事っぷりが明るみに出たことで話題となったこの事件で、普段ほとんどニュースを知らない私でも著者の顔は分かります。

が、、恥ずかしながら事件の詳細はほとんど知らなかったので本作で学びました。

タイトルは何ともいただけないですが、、ただの自己啓発では終わらない、特に逮捕されてからの著者と家族の在り方にはいろいろ考えさせられました。

 

 

 中盤までは、村木さんが「普通の人のロールモデル」となれるよう如何に働いてきたかが描かれています。

当時は働くことが美徳とされたオラオラニッポンで、労働省厚生労働省)というお役所立場から働き方について正面から向き合っていて、

セクハラや残業規制など、今ある多くの制度を第一人者として関わっているのには驚きでした。

しかも好感が持てるのは、随所に見られる「普通の人のロールモデル」を目指したという著者の人柄。

いつも自信がなくて、分からないことは「分からない」と言う。

これまで読んだ勝間和代さんや南場智子さんや小島慶子さんなどが書かれた「働く女性の〜〜」系読書で見られたのは、とにかく対男性で奮闘する、ダイバーシティとか言いながら結局は男と同じ量働けと見えてしまうような女性像が多かったのですが(というか俺がそういう本しか読んでなかったのかもしれませんが)、村木さんはちょっと違った角度でワークライフバランスを語っていて面白かったです。

 

 

で、後半の逮捕されてからの半年間の描写、ここからガラッと毛色が変わります。

簡単に言うと、大きな力により騙されて逮捕されたのですが、中盤まで同様、村木さんの優しい口調で淡々と一部始終を語っているので逆に怖さが際立ってるという、、笑

国の人間が国の人間を陥れるという構図であり、自分が見ている世界が正しいことばかりでないということをまざまざと突きつけられます。

興味深いのは、騙した検事側、騒ぎ立てたメディア側に対し、村木さんからは終始憤りを感じられなかったことです。

ひどい仕打ちを受けたにもかかわらず、村木さんは一貫して「私は悪いことをやっていないから堂々としている」ことを心がけている。

読書して、たくさん寝て、掃除もして、拘留されていても村木さんだし、村木さんの家族も同様、旦那さんは出張へ、娘は修学旅行へ行くという、

圧倒的な信頼感で成り立っている。これはなかなかできないことだと思います。

 

 

時間の裏側には本書には出てこない、 苦しいドラマはたくさんあったでしょうが、それを感じさせない強さには感動しました。タイトルはやっぱりアレですが、中身は万人にオススメです!