『ひらいて』 / 綿矢りさ
★ × 84
内容紹介)
やみくもに、自分本位に、あたりをなぎ倒しながら疾走する、はじめての恋。彼のまなざしが私を静かに支配する――。華やかで高慢な女子高生・愛が、妙な名前のもっさりした男子に恋をした。だが彼には中学時代からの恋人がいて……。傷つけて、傷ついて、事態はとんでもない方向に展開してゆくが、それでも心をひらくことこそ、生きているあかしなのだ。本年度大江健三郎賞受賞の著者による、心をゆすぶられる傑作小説。
今更ながら今年に入って『勝手に震えてろ』『かわいそうだね?』で激ハマりした綿矢りささん。
女性の痛々しい心情を面白おかしくネタ調に描いたものはたくさんあると思いますが、綿矢さんのそれは若さなのか特有の勢いとセンスで、なんとなーく読んでいるだけで割り込み的に笑ってしまいます。
んで今回は2012年発売の『ひらいて』。
予備知識なしで読み始めましたが、なかなか衝撃的な作品でした。
主人公は愛という女子高生。
小説は基本的に愛の一人称で、クラスの「たとえ」(←名前です)君に恋をして、その恋心が行き過ぎてしまう展開です。
行き過ぎる例として、彼が美雪という彼女とやりとりしている手紙を盗み見たり、美雪に近づいたりという、まあ若干ストーカーまがいであっても「一直線な乙女心」の延長線上と捉えれられる程度の行為です。
ただ、個人的には小説で初めてだったのですが、この行き過ぎは、彼女である美雪に近づき、そこからまさかの「美雪と」肉体関係を持つまでに発展していきます。
しかも結構な分量で、なかなか刺激的に描写される辺りはさすが!
んで行き過ぎは止まらず(もう全部書いちゃいますが)、愛はたとえ君を教室で待つ間、どういう訳か、全裸…
通勤途中の電車で読んでいると、愛はもはや狂人にしか映らなかったのですが、盲目さもここまで来ることがあるのかと少し勝手に震えてました。
始めから終わり方も一貫して暗いままで、衝撃の描写だけが少し先行してしまった印象でした。
あと、こっからは勝手な妄想ですが、綿矢さんは奥田英朗さんや新堂冬樹さんのように「白」綿矢と「黒」綿矢が共存していて、本作は「黒」、降りかかる不条理に対してドン暗い方法で向かっていく小説なのかと感じました。
(確か『しょうがの味は熱い』もこっち?)
んで、私が好きな『勝手に~』『かわいそう~』は「白」、状況こそ重くとも、ユーモアとセンスで対峙する力を持ったもの。
私は後者の綿矢さんが好きなのかなぁと、本作を読んで思いました。