『きみはいい子』 / 中脇初枝
★ × 90
内容(「BOOK」データベースより)
夕方五時までは家に帰らせてもらえないこども。娘に手を上げてしまう母親。求めていた、たったひとつのもの―。それぞれの家にそれぞれの事情がある。それでもみんなこの町で、いろんなものを抱えて生きている。心を揺さぶる感動作。
高良健吾さん、尾野真知子さん主演で映画化され評判の良かった本作。
「映画が話題になってから、映画を観ず原作読む」厨の私は今回も小説を…。
連作短編で、ほとんどが児童虐待を扱った話。
初めて著者の作品を読みましたが、描き方が非常にソリッドで、重松清さんよりも切り込み、けれど窪美澄さんよりも光が射す、といった印象です。
どれもかなり重く、そして解決しないのですが、そもそも家族の関係って短編で真理を導けるほど容易いものではないということを訴えかけているようにも見え、下手に丸め込もうとする小説よりもよっぽど考えさせられたし感動しました。
ある編には、幼い頃虐待を受けた女性が、自らの子に虐待を繰り返してしまう設定。
外では笑顔を貼付け、けれど娘が服を汚したりものを壊したりするたび、彼女の中の怒りのバロメータがちゃぷちゃぷを溜まっていき、帰宅後に溜まった個数だけ暴行を加える。
白っぽくてきれいな日常から、黒くて醜い家の中に移り変わる描写は震えるほど怖い。
電車で読んでいたのですが、前に座っている女性を見て思わず「あなたもですか?」と思わざるを得ない程でした…
(映画ではおそらくこの母親役を尾野真知子さん、その友だち役を池脇千鶴さんが演じていると思われますが、個人的には池脇さんのようなかわいい女性でなく、それこそ芸人のオカリナさんとかぴったりと思った笑)
親子を扱った小説はたっくさん読んだ記憶がありますが、その中でも「重さ」という意味ではトップレベルでした。
今は子どものいない状況ですが、子ができてから読む本作はまた違った印象なのでしょう。
とりあえず子どもを持つ前に映画も観なきゃと思わされる作品。おススメ!