『かくかくしかじか』 / 東村アキコ
★ × 97
(内容紹介)
自分は絵がうまい。本気でうぬぼれていた林明子(高3)は竹刀を持った絵画教師・日高先生に罵られ…!? 少女まんが家を夢みたあの頃を描くドラマチック・メモリーズ!
久しぶりに出会う友人に「最近おすすめの本又は漫画は?」と必ず聞いてしまう気持ち悪い私ですが、この半年で3人くらいから「かくかくしかじかやな」と言われてずっと気になっていました。
月初に東京出張があったので新幹線本として何気に1巻を買ってから…もうズブズブ。
一瞬一瞬味わうために「週末に1冊ずつ買う」という謎のサイクルを5週回し、本日ようやく読破に至りました。
本当に素晴らしかった、漫画の力ってすごい!!
『海月姫』などギャグ路線の少女漫画家として有名な東村アキコさんが、自身の学生時代から漫画家になるまでを描いたノンフィクション、全5冊です。
実家の宮崎で漫画家を目指している折、美大を受験するために美術教室を訪れ、そこで出会った先生について描かれています。
つい最近『セッション』という映画で師弟関係が題材となっていましたが本作もそう。
竹刀で女子供を容赦なく叩き、忙しくても有無を言わせず絵を描くことを強要する、現代だとPTAあたりに騒ぎ立てられそうなガテン系。
著者はそんな先生に触れ、漫画家になりたいという夢を抱きながらも美術を学んでいきます。
東村さんは個人的に初めて読んだのですが、絵といい言葉といい、もぉーーとにかくセンスの塊としかいいようがない!
浦沢直樹さんとの対談で「とにかく描くのが早い」と言っていましたが、実際に絵を見ただけでパッパと描いているのが分かるほど(何様だオレは)。
「雑なのにキレイ」というスーパー魅力ある絵、特に「眼」の書き方が素晴らしいなと思います。眼だけで笑えるシーンが何度もある笑
加えて言葉のセンスの切れ味、爆笑の連続!
少女漫画のギャグって、結構己の卑下と言うか、例えば結婚できない問題、容姿の問題などを笑いに変えることが多いような気がしますが、本作のいいところってその逆で、自信過剰だったり体力馬鹿だったりする著者の素性を剥き出しにしていて、卑下しイタさを笑いに持って行くより遥かに気持ちいいというか清々しい。
だから何も気にせず大爆笑できました。
んで本作、1巻からすでに終わりのイメージを連想させる表現が続くので、「これだけ面白いけれど、最終的には悲しいのね…」というおセンチな気持ちを常に抱かせてくるのですが、
いや、当然結局は大号泣になってしまうのですが、
それ以上に最終巻である5巻、やっぱり大爆笑に持って行くギャグセンスと、あくまで笑いを貫いてくれた著者の造り方が本当に嬉しかったです。
これだけ笑いを提供しているからこそ響くものもあったし、何度も読み返してしまう魅力が出てくるんだろうなぁと(実際、すでに3回読み返しましたし…)。
漫画でこれだけハマったのはかなり久しぶりですし、装丁も大満足で眺めても楽しい、本当に誰しもにオススメの作品でした。是非!!