- 作者: 綿矢りさ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/07/31
- メディア: 単行本
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『大地のゲーム』 / 綿矢りさ
★ × 81
内容(「BOOK」データベースより)
私たちは、世界の割れる音を聞いてしまった―。21世紀終盤。巨大地震に見舞われた首都で、第二の激震に身構えつつ大学構内に暮らす学生たちと、その期待を一身に集める“リーダー”。限界状況を生き抜こうとする若者の脆さ、逞しさを描く最新長篇!
遅ればせながらハマり、個人的には2015年の顔として今会ってみたい作家の一人となった綿矢りささん、本作は現在のところ最新作です。
今より数十年後の日本で再び大震災に襲われた大学生たちが話のメイン。
夏に首都圏に大地震が起こり、大学構内に取り残された学生たち。
食糧も尽き、情報も乏しく、余震も続く混沌の中で、一人の男がリーダーとなって徐々に秩序が生まれていく。
「1年以内に同規模の地震が再び起こる」と言われている中で、彼ら彼女らはリーダーの下、味わった許しがたい恐怖を抱えながらも、恋をしたり学園祭を開催したりしてギリギリの所で平衡を保っている状態。
本作はそんな震災後から展開が始まります。
舞台は東日本大震災から数十年後の世界であり、時折未来の描写が出てくるところが面白い。
例えばどうやら銃規制が緩和されている。銃には発信器が埋め込まれており、発砲すると警察に自動通知される仕組みらしい。
といったように、おそらく50年後くらいの日本であり得そうな制度や仕組みについては興味深かったです。
、、、ただ、本作の良かったところを挙げるとすれば以上で、他の要素についてははっきり言って全く面白くなかったです。。うーん、残念
まず、前述のように世界は終末の前で人々が疲弊しきってる中で、命の尊さがもはや現代と全く異なっているという所は分かる。
分かるけれど、余りにも登場人物たちの言動や行動が理解不能過ぎて、主人公始め主人公の彼氏、リーダー、友人のマリ、それぞれに全く感情移入出来ず…
特に混沌の中でヒトラー如く現れたリーダー、少し前でいうと当にSEALDsそのものの活動にも重なるカリスマですが、彼が一体何をしたいのか、利己的なのか民主的なのかはたまた空想論者なのか、何も分からないまま死んでしまったので、物語の核を担っている部分に一切入り込めないまま終わってしまいました。
加えて、終盤には二度目の巨大地震が発生し世界が壊滅状態となりますが、そこから何も解決しないまま生き残った者だけが目の前の人生をとりあえず歩き出す、みたいなテイストで終わっている。
これが結論で主張だとしても、それまでの生々しくて心苦しい震災の残像があまりにも濃く残ったままとなって、一切心晴れないまま読み終えてしまいました。
著者の意欲作!に当たるのかも知れませんが、個人的には痛々しいけれど華々しく力強く生きる女性を描いた他の作品の方が圧倒的に好きです。