- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/08/09
- メディア: 単行本
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『やわらかな生命』 / 福岡伸一
★ × 86
内容(「BOOK」データベースより)
生命を構成するパーツには重複性があり、可変性がある。余剰があり、融通無碍で、遊びがある。生命の特性はその自由度にこそあるのだ―芸術と科学をつなぐ深く、色鮮やかな本質。珠玉のエッセイ集。
分子生物学者の観点から、そして物書きの観点から、自然や芸術について綴ったエッセイ集です。
各編はブツ切りで一貫性がないように見えますが、一言で言えば「好奇心」、福岡さんの文章からいつも感じるそれを、本作もビシビシと感じました。
個人的には2008年に新書大賞を受賞した『生物と無生物のあいだ』から6冊ほど福岡さんの作品を読んできましたが、切り口は違えど核にあるのは
「確かなものなど何もない、故に面白い」
というものです。
これは福岡さんが繰り返し述べ、本のタイトルにもなっている「動的平衡」という、人の細胞が常に死んで生まれるサイクルを回すことで平衡を保つという理論からくるものだと思いますが、本作でも至る所に言及している箇所がありました。
約束なんていうものも生物学的にはやぶってよい。だってそれは過去の別人がしたことだから。自己同一性も自己実現も幻想である。同一の自己も、実現すべき自己もなく、流れだけがある。生物とはファームウェアを焼き直すことで取っ替え引っ替えできる装置ではなく全体として初めて個。
これは科学の事実だからそれ以上でも以下でもないのですが、異常な文章力を持った福岡さんは毎度、この理論を前述のように噛み砕いて、私のようなズブの素人レベルまで落として説明してくれる。以下もそう。
人の心は変わるということ。人は必ず死ぬということ。このあまりにも当たり前の事実を思い出すだけで、たいていのことはやり過ごすことができる。明日も頑張っていきましょう。
本作ではトピックが昆虫から芸術、地図からiPS細胞まで飛び火しますが、それでも根幹の部分は全て好奇心で成り立っていて、私もいろんなことに興味を持って生きていかねばと痛感させられました(これも毎度福岡ワークスで感じることですが)。
たまに読む福岡さん、やっぱ刺激的で好きです!