- 作者: 白石一文
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/10/28
- メディア: 文庫
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★ × 83
内容(「BOOK」データベースより)
あの日、月島の路地裏であなたを見つけた。これこそが私の人生の快挙。しかし、それほどの相手と結婚したのに五年が過ぎると、夫婦関係はすっかり変質してしまった。共に生きるためには、不実さえも許す。それこそが夫婦。そう思っていたが、すべては私の驕りにすぎなかった…。結婚に愛は存在するのか。結婚における愛の在処を探る傑作夫婦小説。
2013年に出版された白石一文さんの夫婦小説。
一組の男女が出会って結婚してから20年間の時間を描いている長編です。
主人公(ヒックン)と妻(みすみ)が物語の大部分を占め、全てヒックン目線で語られている。
ヒックンは写真家や小説家、ライターなどの職に就いては失い、転々と不安定な収入で生きる男。みすみは小料理屋を営み、ヒックンを支える女。
2人はそれぞれ大病を患ったり身内を失ったり、はたまたみすみの不倫と、20年の間起伏のある生活を送っている様子が分かる。
分かる‥のですが、その起伏の前後でも、各々の感情にどうも移入できなかったというか、何か俯瞰的にしか見れなかったというのが率直な印象です。
大抵の小説では、頭の中で浮かんだ情景の中で、プロットに沿って登場人物のコマを動かしながら読めるのですが、
本作を読んでいてもナラタージュを淡々と聞いているようで、その理由はよくわかりませんが、何となく訳書を読んでいる感覚にも近い。
白石一文さんの小説ってこんな感じだったっけか?と振り返ってみると、、あ、私これまでに『この世の全てを敵に回して』という小説しか読んだことなかった‥
あと、BOOKデータベースは「結婚に愛は存在するのか。結婚における愛の在処を探る小説」なんてことを謳っていますが、愛がメインディッシュに添えられているのは私の感覚と違いました。
二人が出会った瞬間や不倫が終焉し上京した瞬間、みすみのがんが誤りだと分かった瞬間と、
「時間軸の中でいくつも快挙がある」ということを実感している主人公の感覚こそ核の部分なのかなと個人的には思います。
又吉さんの『火花』にも近い哲学と感じました。
読みやすさはさすがです。夫婦小説を読みたい人はどうぞ!