- 作者: 野口健
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2014/06/14
- メディア: 新書
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★ × 88
内容(「BOOK」データベースより)
美しい「日本の象徴」でいま起こっていることは、日本社会が抱える問題そのものだ!複雑に絡まり合う利害関係をどう解きほぐし、国家の宝を後世の人々へと受け継ぐべきか。日本を代表するアルピニストが語った「ほんとうに質のよい観光」とは。
タイトルの通り、2013年に世界遺産に「仮」登録された富士山にまつわるもので、メディアで取り上げられている「世界遺産バンザイ論」や、爆発的に流行している観光としての富士登山に対して野口さんにしか出来ないアンチテーゼを唱えていて、非常に興味深く読み進めました。
私も知らなかったのですが、「仮」登録されたことがメディアで、あたかも未来永劫の遺産登録かのようにしか伝えられていませんが、
大切なのは「仮」を外すために日本がユネスコ様から頂いた宿題にある、ということを本書で繰り返し主張されています。
その宿題とは、
- 2016年2月までの、環境保全などの改善へ向けた報告書提出
なぜ仮登録止まりなのか、その理由がこの宿題の「環境保全」というキーワードに隠されている。
形が珍しくないだの比較的新しい山だの様々な理由があるそうですが、一番の理由は「とにかく汚すぎる」こと。
私は富士山を登ったことがないのでわかりませんが、野口さんが10年ほど前見た富士山の描写は衝撃でした。
登山途中、遠くの方に山手から白い川が見えたそうですが、よく見るとそれはトイレットペーパーだったとのこと。
つまり、大も小も垂れ流し状態だったそうです。
そもそも富士山ほどの高山に、年間30万の人が行くこと自体が世界的に見て異質だそう。
野口さんはマイカー規制や鉄道、入山料徴収など多くの提案をされていて、富士山を守るためには人数制限しかないと述べています。
それはホントそうですよね、30万人の、ましてや海外観光者を含めた全員が山という非日常の環境改善を、日常的に考えているワケないですもん。
そう考えると、富士バブルが来月頭にどうなるのかかなり興味あります。
あと、興味の点では山梨と静岡の対比も面白かった。
富士山景気にとかく肖りたい一心で山開きも早くやっちゃう前者と、できる限り富士山景気を抑制したい後者。そして二者の確執で発生しちゃう、例えば「山開きしたのにトイレ無えじゃねえか問題」。
何事においても右側と左側の対立があって、富士山もまた然りですが、国の、というか世界の文化遺産を前にしてこの争いはどうしても小ちゃく見えてしまうというか、争ってる場合じゃねえだろうと言いたくなってしまいますね。
とにかく来月注目です。よりXデーを楽しみたい人は是非今月中にどうぞ!