- 作者: 中村淳彦
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/01/29
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (10件) を見る
★ × 84
内容(「BOOK」データベースより)
性交渉未経験の男性がこの20年間、増え続けている。いまや30歳以上未婚男性の4人に1人が童貞だ。オタクが集うシェアハウスで理想の女の子の絵を描き続ける32歳、容姿への自信のなさから同性愛を選択した36歳、AV男優に採用されたが女優に嫌がられセックスできないまま自殺した33歳―。彼らに共通するのは、過剰なプライドの高さ、コミュニケーション不全、潔癖な女性観だ。童貞というコンプレックスは彼らの社会的な自立をも阻害する。性にまつわる取材を続ける著者がえぐる日本社会の不健全さ。衝撃のルポルタージュ。
同タイトルの漫画を知ったのがきっかけ。
30歳以降の、私生活でも風俗でも性交経験のない「中年童貞」にスポットを当てた作品です。
構成としては複数人の中年童貞の密着取材+著者の問題提起となっていて、あらすじには取材で浮き彫りとなった実体が以下のように強調して書かれています。
オタクが集うシェアハウスで理想の女の子の絵を描き続ける32歳、容姿への自信のなさから同性愛を選択した36歳、AV男優に採用されたが女優に嫌がられセックスできないまま自殺した33歳‥
とまあ字面として刺激的な文章が並んでいるので当然ここを取り上げるのですが、個人的に興味深かったのは終盤の著者の問題提起の方です。
中年童貞の根に巣食うのはマザコンやパラサイトで、自分は社会の羊水に守られている。
ゆえにプライドが高く他者を理解できない、自立できないといったことが書かれていて、これは特段童貞に限った話ではないと思いますが、性別には少なからず当てはまるんじゃないかなと感じました。
子を産むことで半ば強制的に社会で自立する女性と、母親さえいればひとまず生きていける男性。
意識の差は統計にも表れていて、(最新データは分かりませんが)35歳で未婚の男性が44歳までに結婚できる確率は3パーセント(!)だそう。
多少乱暴ではありますが、こう言われると婚活バブルも無下に批判できないなぁ、、なんて考えてしまいました。
それよりも「うーん‥」というのが中盤までのルポ。
実際に中年童貞の方を取材しているのでリアリティはあるのですが、どうしても彼らを「見下してる感」が拭えない。(まあテーマがテーマなのでどう書いてもこうなるのかもしれませんが)
本書を出すこととなった発端が、著者が介護サービス事業を運営する中で、職場環境を乱す男性は漏れなく中年童貞だったという経験からきているので、多少バイアスがかかっているのは仕方ないですが、
それにしても「中年童貞=異常」という方程式はあまりに乱暴じゃないだろうか、
「異常な人は中年童貞だった」というだけで、これは必要十分でない非可逆の式だと個人的には思います。
私の職場に中年童貞であることをネタにしている人がいますが、とても人思いで趣味も豊富です。
本書で定義する図式とはかけ離れている。
一つの切り口として中年童貞を取り上げるのはいいのですが、私情が乗った、或いはセンセーショナルなテーマで話題になるといった背景が見えそうでちょっと読みづらかったです。