- 作者: 柴崎友香
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2001/02
- メディア: 単行本
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『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』 / 柴崎友香
★ × 86
内容(「MARC」データベースより)
大阪発東京行。友人カップルのドライブに男2人がむりやり便乗。4人それぞれの思いを乗せたドライブ旅行の行方は? せつなく、はがゆいロード・ラブ・ストーリー。ほかに「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」を収録。
友人の2015ベスト5に入っていたので読みました。
個人的には『きょうのできごと - bookworm's digest』以来の柴崎友香さん。
一瞬で読み終わりましたが、やっぱ面白い作家です。訳書を読んだような不思議な感覚。
表題作は20代男3人、女1人の物語。
うち男1、女1は付き合っており、男2は女1のことが好き、男3は別の女が好き、
4人は友人関係で、関西から車で東京へ向かうロードムービー小説です。(ムービーなのに小説て変か)
主人公、というか視点は男2、つまり女1のことが好きな男性で語られています。
彼は、うーん例えるならザキヤマ?のようなイメージとでも言えましょうか、
四文字で言えば傍若無人、とにかく自分勝手で、元々男1女1のデートで東京へ行くはずだったのにも関わらず無理やり車に乗り込んだり、
高速道路の途中で鰻が食べたいと言って一般道に下ろしたり、
あぁ、思い出すだけでもイライラするし、旅行なんて絶対一緒に行きたくない部類の人間です。
一応写真家としてプチブレイクしている程の才能があり、だけどそれを振りかざしているような、もういっそ才能なくて優しい奴の方が100倍マシだと言いたくなるような嫌な奴。
そんな奴と一緒にドライブ旅行する他3人の優しさに只々脱帽です。
けれど読んでくうちに、なんとなーく彼に惹かれていきました、これがホント不思議。
なぜ不思議かって、のちのエピソードにも特に彼の良いところなんて出ないままだから。
「ココです、このエピソードで彼のことを好きになれます、なのでそれまでのマイナスを払拭です」という明確なトリガなく、気づけば彼を少し同情してたりニヤッと笑ってみたりしている。
読んだ方いらっしゃったら是非感想を聞きたい。
「言わずとも、言う。」
これが柴崎友香さんの真骨頂なのかなぁと勝手に思いました。
脱線しますが、著者紹介に「サリンジャーの会話体」と書かれていました。
私はサリンジャーを1作品『キャッチャー・イン・ザ・ライ - bookworm's digest』しか読んでないのでなんとも言えませんが、初めに書いたように「訳書っぽい」という点は私も感じました。
それは絶妙に感情移入できないというか、どこかリアリティに欠ける点が『きょうのできごと - bookworm's digest』同様で、それも著者の魅力なのかと思います。
サラサラーッと読めるので、移動中や寝る前の軽い読書向き本です。