- 作者: パトリックシャモワゾー,関口涼子,パトリックオノレ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/01/19
- メディア: 単行本
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★ ✖️ 85
内容(「BOOK」データベースより)
『STONER - bookworm's digest』に続き翻訳大賞シリーズ第二弾。
「クレオール文学」という人生初のジャンルへの挑戦でもありました。
レビューする上で、はじめに「クレオール文学」について説明したいと思います。
クレオール言語(クレオールげんご、英: creole language)とは、意思疎通ができない異なる言語の商人らなどの間で自然に作り上げられた言語(ピジン言語)が、その話者達の子供達の世代で母語として話されるようになった言語を指す。公用語や共通語として使用されている地域・国もある。つまり、異なる母国語を持つ2つの民族が出会った時、一方の言語をもう一方の民族が訳すことで相互理解を深めるものでなく、両者の歩み寄りにより第3の言語を駆使して意思疎通を図るプロセス、この「言語」を指すそうです。
(さらに調べていると、どうやら著者シャモワゾーさんは「クレオール」を世に広めたキーパーソンだそうで、それっぽい用語をORサーチするとジャブジャブ引っかかりました。)
と、いうことは「クレオール文学」と帯にある本書は、そうやって生まれた第3の言語を訳した小説なのか!と一瞬厨二魂燃え上がりましたがどうやらそうではなく、本書はあくまでフランス文学、しかし登場人物のなかにクレオール言語を扱う者が出てくる、程度のテイストでした。
‥と、少し前向きが長くなりましたが、前置きが長くなったのは「クレオール文学とは何か」を伝えたかったからではなく、
「クレオール文学を扱った本書が如何に読みにくく、何度挫折しそうになったか」、
その苦労を知ってほしいためです笑。
述べた通り、クレオール言語は意思疎通できない二者間同士から生まれた人間の知恵の結晶、それを更に別言語である日本語に訳すということは、誤解を恐れず言うなればヒトがイルカ言語を理解するようなものではないでしょうか。
加えて、本書はある人物の日常を淡々と描いただけのシンプルなものではなく、「殺人事件」という、まさかの精密なプロットが要求される小説ジャンルの極致を題材しています。
そんな厳しい制約条件から生まれたものです。故に読みにくさ満開なのですが、そんな、読みにくさとかを超えて、ただただ訳書として生まれるまでの書き手の苦労が詰まった素晴らしい作品だという実感の方が大きかったのも事実です。
なんかすごいネガティブな感想に取られるかもしれませんが、実際第3章以降でキチンとミステリーとしての展開もあり、理解困難の無限地獄が続くと思われた矢先に「理解できたぞ!ちゃんとしたプロットで俺は驚けたぞ!」という喜びも感じることができました笑
ほとんど内容のレビューになっていませんが、貴重なものを読んでいるのだという高揚感だけで読む価値のある作品でした。読みきった人とぜひ感想を語り合いたい笑