『すべて真夜中の恋人たち』 / 川上未映子
★ × 89
内容(「BOOK」データベースより)
孤独な魂がふれあったとき、切なさが生まれた。その哀しみはやがて、かけがえのない光となる。芥川賞作家が描く、人生にちりばめられた、儚いけれどそれだけがあれば生きていける光。『ヘヴン』の衝撃から二年。恋愛の究極を投げかける、著者渾身の長編小説。
きみは赤ちゃん - bookworm's digest ですっかり著者自身に魅了された川上未映子さん、小説としては『乳と卵』『ヘヴン』以来に読みました。
最近洋書だったり新書だったりが続いていたので、ひっさびさ、こういう典型的な恋愛模様、文章自身の綺麗さや情景そのものを味わうようなジャンルの小説を読みました。
主人公は30過ぎて彼氏のいない、本の校正を仕事としている独身女性。
性格としては内気、自己主張もしなければ不平不満も言わず趣味もない、テイストは大きく違えど津村記久子さんがよく働く女性小説でフィーチャーするような人物です。
津村さんと違うのは、津村さんが「陽」ならば川上さんが「陰」、主人公は自身の性格に自信もないし開き直りも出来ず、かと言ってこのままじゃダメだと改善方向にも向かおうとしない、見ててちょっとイライラするところ。
んで、本作の「陽」を担うのが主人公に仕事を依頼してきた「聖」という別の女性。
彼女が本作で終始キーワードっぽいことを放つことで、殻に籠った主人公のルーティンを良くも悪くも変化させていきます。
んで、アマゾンのレビューでも複数の人が書いていましたが、私もさっき書いた通りちょっと登場人物に対してイライラするんですよね。笑
それは聖が物語の終盤で言ったように、みんながみんな自分に酔ってる感がどこかしら滲み出ているから。
エッセイを読む限り川上未映子さんってものすごくフラットで、こういう小説をあまり書かないと思っていたから意外でした。
失礼かもしれませんが、小説をあまり読まない若い女性にも共感してもらえるよう、あえて次元を下げて表現しているのかな?とも思いました。
ただ、物語で唯一の変化球を担う聖の言葉だけは要所要所でパンチ力があって、それはプロットに沿って出てきて初めて刺さる言葉と言うよりは、言葉そのものを切り取って十分パワーのある川上未映子さんの哲学という感じなので、89点という高得点をつけたのも、結局著者の哲学スコアになっちゃっているかもしれませんが、、、
うーんやっぱり次は別のエッセイを読もうかな?という感じでした。
最後にいいなと思った文章を引用します。女性は共感ポイントが多いと思われる小説なのは間違いので興味があれば是非!
たとえばさ、うれしいとか悲しいとか、不安とか、色々あるじゃない。テレビみて面白いなぁとか、エビ食べて美味しいなぁとか、なんでも。でもね、そんなのっていつか仕事で読んだり触れたりした文章の引用じゃないのかって思えるの。何かに対して感情が動いたような気がしても、それってほんとうに自分が思っていることなのかどうかが、自分でもよくわからないのよ。とにかく他人のものを引用しているような気持ちになるの。