『ロマンス』 / タナダユキ
★ × 80
内容(「BOOK」データベースより)
鉢子はロマンスカーの車内販売員。ある朝届いた生き別れの母からの手紙がきっかけで、彼女は怪しい男と箱根巡りをするハメに…気鋭の映画監督が書き下ろすユーモラスで心をしめつけるドラマ。
『復讐 - bookworm's digest』以来のタナダユキさん。
全く知りませんでしたが、大島優子さん主演で昨年映画化もされていたそうです。
本作はその原作ですが、、、うーん、「うーん」と常に思いながらなんとか読み終わりました。
あらすじは小田急電鉄の特急ロマンスカーで車内販売員として勤める女性が、車内で「桜庭」という1人の男性と出会い、なぜか成り行きで母親を2人で探しに行くハメになる、というもの。
好きだった父親と別れたあと、何度も別の男を家に連れ込んでいた母親に対する主人公の反発心が、桜庭と出会うことによって変化していくという成長物語。
一方で後半には桜庭も自らの過去と決別していくという、主人公よりも割合は少ないながらも、脇役の成長過程も固めた、タナダさんらしく映画的な作りにはなっています。
しかし、私が「うーん」と煮え切らなかった理由、それは①どう考えても無理のあるストーリー展開と、②物語の核の為すハズの桜庭という存在の薄っぺらさ にあります、、、
①については前述した通りで、車内販売員の女性とオッサンの客が出会い、その日のうちにあれよあれよとドライブからのラブホ直行してしまうという、少女漫画のようなトンデモ設定。
しかも出会いは、桜庭が車内販売のお菓子を万引きし、その現場を主人公が押さえるというもの。
つまり主人公は自分の捕まえた万引き犯と数時間後にラブホに行っちゃってることになってる訳です。
もちろんそこには理由がありますが、どれだけ説明されても、そんな展開はまともな神経ではあり得ない。
「小説だぜ、楽しめよ」という天の声を己に言い聞かせてみたものの、やはり納得いかない感情がどうしても邪魔しました。
②についても何だか違和感。
小説の終盤まで桜庭自身の心情描写はないため、後半のどんでん返しとしてのポジションを期待(主人公の母親の昔の男とか、実はネコでしたとか、、)していたのですが、いつの間にか桜庭の心情もフツーに描かれていて、しかも過去のエピソードも何ともフツーで、ここまで「フツー」の男女が車内で出会ってから数時間でラブホ(3回目)行くかいっ!
と、読んでてちょっとイライラしてしまいました、、、
批判ばかりですみません。タナダさんの映画が大好きな故にいろいろ思ってしまいました