『コンビニ人間』 / 村田沙耶香
★ × 93
内容(「BOOK」データベースより)
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。
芥川賞受賞作ってのは、内容うんぬんというよりもそれまでの人生で私が読んだことのなかった構成や文体を楽しむものというか、
だからここが面白かったのだと紹介しづらい、けど「それを読んだ俺は時代についていってる」という下世話な優越感も味わえるとか、
なにか物語以外のオプションに見出しがちで、まあプロット楽しむなら他の賞レースでいいよなぁという気持ちを今まで持っていましたが、
どうしたんだ芥川賞選考者!!と声が出るくらい本作はプロットもしっかりした、素晴らしい小説でした。芥川賞のイメージを変えるほど、これなら人にオススメできるなぁ〜
主人公は高校卒業後、18年もコンビニのアルバイトとして働く独身女性。
週5日、朝から晩までひたらすらコンビニのことだけを考え、早く寝るのはコンビニのため、夢の中でもレジ打ちや発注しちゃったり、「1人の人間である前にコンビニ店員」という決め台詞を持っていたりする。
そんな風に日々の生活がコンビニから一切出ない、決まり切ったルーティンをこなしています。
んでミソなのが、一般的な小説だとこの「決まり切ったルーティン」が中盤あたりまで描かれて、後半にそれから脱却する白馬の王子様的展開となり、「外の世界はこんなにも広かったんだ、、!」という開けた終わり方となるのが多いと思いますが、
本作では真逆、「やっぱり私はコンビニ人間なんだ」ということを最終的に謳う、というところ。
高校卒業後、特に理由もなくアルバイトでコンビニ店員を続けてきた主人公、当然家族や友人からは転職や恋人の話が尽きない。
その理由は、「一般的・平均的な36歳女性」というハコがあるのなら、主人公はそこから大きく逸脱しているから。
だから変・おかしい・気持ち悪いと貼られていくんですね。
そんな言葉を受け主人公は、これ以上周囲の人間を悲しませないためにも、そろそろ「ハコ」にはいったほうがいいのかしら、、と、同じくアルバイトで勤務していた1人の男性を自宅に住まわせるようになります(この住まわせ方がまあ面白いのですが笑)。
それが世に言う、一般的・平均的だから。
その後も転職活動したりして、ハコに収まるよう努めますが、最後には前述の通り、やっぱりコンビニに戻ってしまう。
これ、角度は違えど主張としては西加奈子さんの作品に非常に近いものを感じました。
「自分は自分」という軸は大事、ということは頭では分かっているけれど、いざハコから逸脱した人を見ると反射的に軽蔑してしまうことがあるし、自分は逸脱しないよう反射的に努めることもある。
現実世界で私がこの主人公に会えたなら、やっぱり軽蔑してしまうんだろうなぁ、、
けれどなぜハコから逸脱することが悪いことか、ハコが正しいことかってことが説明できない限り誰にも批判する権利はないので、こういった作品を読むたびに自分は小せえなぁと恥ずかしくなります。
主張も非常にわかりやすい分、短いながらも印象に残る作品でした。
万人にオススメできる珍しい芥川受賞作品と思います、ぜひ!!