『怒り(下)』 / 吉田修一
★ × 91
内容(「BOOK」データベースより)
愛子は田代から秘密を打ち明けられ、疑いを持った優馬の前から直人が消え、泉は田中が暮らす無人島である発見をする―。衝撃のラストまでページをめくる手が止まらない。『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!
『怒り(上) - bookworm's digest』に引き続き下巻。9/17映画公開を前にして、一切のキャスト情報をシャットアウトしたまま何とか読み終えました。
うーーんさすが吉田修一さん、、面白かったです、一気読み!!
全く異なる別々の場所で生きる、田代、直人、田中という素性の知れない3人の男。
彼らのうち誰かが、1年前に起こった殺人事件の犯人で、映画のキャッチコピー通り「あなたは殺人犯ですか?」と常に問いかけながら読み進めることになります。
上巻では3つの物語はの相関が全く読めず、彼らの周囲に生きる人々のサイドストーリーばかり先行して中々核心に触れられませんでしたが、
下巻ではじわじわと真実が明らかにされていく、そういった意味で後半加速型のど真ん中ミステリーであることは間違いありません。
が、読み終えた今、犯人は誰なんだという求心力以上に、上巻から過度とも取れる程ディテールを描いたサイドストーリーにこそ本作の核があったんじゃないかと思います。
以下、犯人のネタバレはしないまま感じたことを書きます。
3つの物語では共通して、身近な人物を信じるか信じないかということについて問うています。
その内の1人の男性は、過去に借金を抱えて逃げていることだけが分かっているものの、周囲の人物はそれが嘘か誠か疑い始める。
読みながら、最初から大方8割くらいはソイツが犯人かどうか気になる気持ちが心を占めていたのですが、いざ全てがわかってからの残りの2割は、一見関係なさそうに見えた「周囲の人物」に非常に心を奪われることになりました。
つまり犯人探しの要素を利用しながら、結局は吉田修一さんが著作でよく描く人間ドラマがしっかりと土台にある、といった構成になっています。(それゆえ映像化しやすい原作なのでしょうが)
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ちなみに「周囲の人物」のなかでも一際目立つ「愛子」という悲しい過去を持つ女性、読後キャストを見ると宮崎あおいちゃんでした。
うおーーーピッタリ!!
ゲイ役を演じるであろう妻夫木くんと同じくらい個人的にピッタリなキャスト。観たいぜー、、
少し分からなかったのが、タイトルにもある「怒り」の意味。
これは犯人が犯行現場に残した文字ですが、これに触れられるのは犯行が起こった序盤、そして犯人が判明する終盤のみであり、繰り広げられるサイドストーリーの中ではほとんど出てきません。
もちろん犯人自体の物語もあるにはあるのですが、限られたページ数(それでも上下巻ですが)というのもあってか分量は少なく、「なぜ犯行を犯したか?」がわからないまま終わったのが少し残念。
わかる人がいたら是非教えてほしいです、、Amazonのレビューも読んでみようかな
『悪人』再び!と宣伝されていますが確かにその通り。
あの有無を言わせないダークな吉田修一さんの世界観を映画を期待したいです。
あと2日ですが間に合う方は是非原作を!笑