『消滅世界』 / 村田沙耶香
★ × 88
内容(「BOOK」データベースより)
「セックス」も「家族」も、世界から消える。日本の未来を予言する圧倒的衝撃作。
可愛い装丁の芥川賞受賞作『コンビニ人間 - bookworm's digest』で初めて知った村田沙耶香さん、すごく興味深い作家さんだなぁと思ったので、こちらは打って変わって好きじゃないルックスですが笑、手に取りました。
「セックス」が消えるという、キャッチーなコピー文がついた近未来型小説です。
舞台は数十年後の日本、そこでは人工授精で子供を産むようになっており、夫婦間のセックスは「近親相姦」とされ、旦那も妻も夫婦とは別対象(二次元あるいは三次元)の恋人を持っています。
そんな世界に住む主人公の雨音は、もともとセックスから産まれた最後の世代ですが、本人は朔という旦那とセックスの無い家族を作り、人工授精で子どもを作る、新たな世界に染まろうとしています。
中盤以降、2人は千葉にある実験都市エデンに移住し、男性も人工子宮によって妊娠ができる繁殖システムに試みもする。
「女性がお腹痛めた末の我が子」、という概念を覆す予言的な内容で、読み始めてからのめり込む気持ちが比例的に上がっていくような読書でした。
近未来小説、最近だと多和田葉子さん『献灯使 - bookworm's digest』や上田岳弘さん『太陽・惑星 - bookworm's digest』を読みましたが、そこには旧世代が新世代へと移りゆく際、その境界上での葛藤のようなものが描かれていて、私はそれが好きなんですが、
この小説は終始ソレばっかです。笑
主人公の場合、普通のセックスで己を産んだ「母親」と新世代との狭間で揺れ動き、新世代に移ろいたいものの他者と繋がりたいという性欲も根底にはあって、自然に新世代に馴染む周囲と比べ自分は異常なのか、その苦悩で6割くらい埋まってます。
ただ、そればっかりではなく、最後にバッチリ心持ってかれたのがすごかった。
千葉の実験都市に移った辺りから主人公の心は新世代に大きく傾いたものの、旧世代に生きる者(というか私)としては「やっぱお腹痛めて産まなきゃね」というオールドスクール落ちで何となくほっとしたい気持ちがあったのですが、
そんな思惑吹っ飛ばす、キョーーーレツにいやぁ〜〜な感じの結末が待っていました。
「母親へのコンプレックス」、これが最後こんな風に弾けるとは、、、いやぁ気持ち悪い!!言えないのですが、ぜひ読んでいただきたいです。。
限りなくローカルな世界を描いた『コンビニ人間』からは遠く離れた設定で、同一の著者とは思えないですが、二者択一で揺れ動く、という点においては共通で、その機微を描くのがとても上手だなぁと感じました。
他の著書もセンセーショナルなタイトルが多いですが、コンスタントに読んでいこうと思います。