『廉恥』 / 今野敏
★ × 84
内容(「BOOK」データベースより)
警視庁強行犯係・樋口顕のもとに殺人事件発生の一報が入った。被害者は、キャバクラ嬢の南田麻里。麻里は、警察にストーカー被害の相談をしていた。ストーカーによる犯行だとしたら、マスコミの追及は避けられない。浮き足立つ捜査本部は、被疑者の身柄確保に奔走する。そんな中、捜査の最前線に立つ樋口に入った情報―公立中学や高校に送られた脅迫メールの発信源リストの中に、樋口の娘・照美の名前があったという。警察官の自宅に強制捜査が入れば、マスコミの餌食になることは確実で、処分も免れない。樋口は更なる窮地に立たされた―。組織と家庭の間で揺れ動く刑事は、その時何を思うのか。
『陸王 - bookworm's digest』に引き続き、久しぶりに読む著者シリーズ。
(この頃公私とも長距離移動が多く、読みやすさで本を選びがち、、落ち着いたらぶっとい難解な本を読もう。。)
今野敏さんは『隠蔽捜査』シリーズをスピンオフの『『初陣 隠蔽捜査〈3.5〉』のレビュー 今野敏 (tacbonaldさん) - ブクログ』まで読んだ以来、5年ぶりでした。学生時代は一時期のめりこんだなぁ、、
あらすじは前述のbookデータベースの通りで、お馴染み警察物。
樋口顕シリーズはおそらく初だと思います、樋口の友人や同僚は多分他の著書でも出てきているような書きぶりでした。
隠蔽捜査の竜崎としか比べられず申し訳ないですが、頭の固いキャリア一辺倒の竜崎と違い、本作主人公の樋口はとにかく「一般的」。
家族との関係に悩めば被疑者を無理やり落とすやり方に悩み、かと言って一匹狼で我を突き通す真似は出来ず、特技は空気を読んで場を丸く収めることです、と言わんばかりの「いい人」です。
ゆえに周囲の信頼とリスペクトを知らず知らずのうちに得ている、、というのもまた特徴で、色物目線だった隠蔽捜査シリーズと違って樋口は身近にも感じられる目線で読めました。
事件の焦点は「冤罪」。
殺害された女性をかつてストーカーしていた者、痴漢した疑いを掛けられた者と立て続けに容疑者が登場し、彼らに対して警察はバイアスなく事件の真相を探ることができるか、という点です。
男縦社会である警察組織の中で、樋口も同じくハナから容疑者が犯人であると疑った状態で事件に臨んでしまいます。
その歯止めをかけるのが、おそらくシリーズで初登場の女性・小泉。
紅一点の彼女は被害者の女性目線で事件に迫り、終盤に真相にたどりつくための重要な役割を担います。
(隠蔽捜査シリーズでもこういう女性いたな、、)
が、真相究明自体はガリレオのようなドラスティックなものでなく、淡々と展開されたまま読み終わってしまいました。
これは私の、ミステリーに対する「驚きたい!」という姿勢が問題なような気がしますが、、すみませんが、すんなり終わってしまって少しガッカリした気持ちになりました。
サイドストーリーとして、樋口の娘が脅迫メールの送り主の疑いをかけられ強制捜査に入られる、という展開もあるのですが、こちらも終盤どうなるのかと期待したものの、特に起伏なく終わってしまいました。
今野敏さんはそもそもこういうテイストで描く作品が多かった気がしますが、歳をとって心がより汚れたせいか、静謐なミステリーを楽しめなくなったのだろうか、、
うーーん残念。未読の隠蔽捜査シリーズに立ち戻ろうか検討します、、