『喰う寝るふたり 住むふたり』 / 日暮キノコ
★ × 91
町田りつ子と野々山修一は交際10年、同棲生活8年目。 恋人以上、夫婦未満の三十路直前カップル。 そんなふたりに起こるちょっとした日常を 男女両方の視点から描いた恋愛ザッピングストーリー。
私は結婚してから奥さんの物捨て癖が移ってしまい、「買う」よりも「集める」漫画を避けるようになってしまったのですが、
去年新幹線本としてノリで買った『かくかくしかじか - bookworm's digest』の1巻に打ちのめされ、漫画を集めるっていいじゃない!笑 という学生時代の気持ちに戻りました。
ただそれ以来、1巻を買っては「うーん、続きは気にならない、、」という不作の時期が続いていて、ブレイクスルーが欲しいなぁと思っていたのですが、
本作は1巻を読み切った刹那、あっという間に揃えてしまいました笑 素晴らしかった!
本作の魅力は「構成がほぼ全て」 なところがあり、
同棲するカップルの日常を、第1話では彼女目線から描き、第2話では全く同じ時間軸を彼氏目線から描きなおす、という構成になっています。
だから嫉妬や探り合いやすれ違いなど、人間関係のあるあるが余すところなく描かれている。
この構成、人生ベスト5に入れたい村上龍さんの小説『最後の家族 - bookworm's digest』も、任意のシーンを複数人の目線から繰り返し描く手法で、
これは一見説明過多のように思っていたのですが、常に登場人物の気持ちを理解しながら読み進められ、「この時どういう感情だったのだろう」という含みを一切持たさず、一つ一つ納得しながら読めるのが意外に良かったのを覚えています。
そんなスローテンポな手法を、小説よりも更なる消化スピードが求められがちな漫画でやってしまう、というのが素晴らしいと思いました。
(こういう、時間軸を重ねたマルチ一人称の漫画って他にあるのかな、あれば読んでみたい)
あと、構成が全てとはいいつつも、漫画を好きになる重要な要素である「絵の上手さ」についても、丁寧で分かりやすい線を描かれていてすごく好きでした。
可愛い女性か描かれているかどうかってすごく大事なことだと思うのですが(いや、下世話な話でなく真面目に)、りつ子や修一のかつての彼女などすごく可愛くて魅力的で、
レビュー書きながら思いましたが、久保ミツロウさんの『モテキ!』を読んだ時にも似た恋する感情みたいなのを抱きました。
漫画にもホントいろいろあるんだなぁ、、勉強になります!断捨離モードは忘れず、けれど良い漫画は集めたいですね。