『シスト』 / 初瀬礼
★ × 88
内容(「BOOK」データベースより)
フリーのビデオジャーナリスト・御堂万里菜は、チェチェンでの戦場取材から帰国後、若年性認知症と診断される。ショックを受けながらも逆境を逆手にとり、自らのドキュメンタリー番組を企画するが、病状の進行は緩やかで、取材は停滞していた。そんな折、タジキスタンで原因不明の感染症が発生する。それは、感染から約1ヶ月で死に至り、特効薬もないという恐ろしい病だった。所属会社の後輩と共に、万里菜はタジキスタン取材に赴くことになるが―。圧倒的リアリティとダイナミズムで描く、読み応え満点の社会派サスペンス!
ここ最近こういったガッツリ小説を読んでいなかったので、久々で血湧きました。
元々テレビ局勤務の著者、個人的に初です。
あらすじは上記のBOOKデータベースを参照いただくとして(レビュー放棄)、
個人的な感想としては、序盤から中盤にかけてグオオオオーッと惹きつけられて、後半ちょっと失速、という感じでした。
盛り上がったのは、若年性認知症と判断された主人公が、奇病が発生したタジキスタンにフリージャーナリストとして向かう場面。
小島という女性の後輩を連れて行くのですが、着いてすぐ、大量を血を吹き出して小島が死んでしまうというまさかの展開。
それまでは割とビジネス書、社会書のノリで読んでいたので、ここいらで一気に「おおーこっちのジャンルか!」とテンション上がりました。
小島に限らず、作中では結構な役者が次々と死んでいきます(しかも中々のグロさで)。
その辺のテンションがウォーキング・デッド宜しくな容赦なさなので、中盤以降はアメリカドラマを観ているような感覚になりました。
物語の肝は「若年性認知症」と「感染症」で、一見無関係の2つがじわじわと絡み合っていくところ。
更に終盤には単なるパンデミックではなく、主人公、更にはアメリカやロシアといった国家単位の目論見が明らかになり、一気にスケールが広がります。
その辺のSFさを著者オンリーワンなリアリティで描き切った様が評価されているのかなと思いますが、個人的にはリアリティやスケールの大きさってどんな作品でもあまりピンと来ないので、ラスト辺りの展開にはイマイチのめりこめず、、
それよりも若年性認知症の患者を描いたシーン、姑への虐待を描いたシーンの方がなかなか考えさせられ、あぁこれぞ社会派と感じました。
一応フィクションの未来設定になっていますが、この日本で全然あり得るデストピアだなぁと恐れました。
2016年の長編はおそらくこれが最後?
あと1週間、何を読んで締めくくろうか、、