- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/10/25
- メディア: 文庫
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『とんび』 / 重松清
★ × 86
内容(「BOOK」データベースより)
昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族三人の幸せを噛みしめる日々。しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう―。アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。魂ふるえる、父と息子の物語。
私事ながら昨年子どもが産まれたのですが、昔からやってみたかったことの1つとして「子どもが産まれてから重松清を読む」というのがあります。
中学・高校時代に片っ端から読んだ重松さん、家族を持っていない身だったにも関わらず親心分かったような気がしていた昔の感覚が、歳をとってからどう変化するのか楽しみで、大好きだった『きみのともだち』『ナイフ』などは家にとってあります。
本作は初めて読みましたが、男手一人で息子を育てるヤスさんという男性が主人公。
少しまだ読むのが早かったかもしれませんが、ヒッサビサの重松さん節を感じられて良かったです。
ヤスさんは美佐子さんという素敵な奥さんを、息子のアキラがまだ小さい時に亡くしてしまいます。
その後は男手一人という環境に苦労しつつ。多くのともだちに助けられながら、アキラを大学に入学させるまで立派に育てます。
ヤスさんはあとがきにもあるように、とにかく無骨、酒飲んで拳で語り合って人目憚らず涙を流す男。時代設定が少し古いので今の父親像からは少し離れていますが、それでもグッとくる場面はいくつかありました。
終盤、息子のアキラに子どもができたと打ち明けられるシーン。
アキラの奥さんの由美さんは離婚歴があり、アキラには既に健介という連れ子がいる状態なので、ヤスさんにとっては今回の子どもが、血の繋がった初めての孫ということになります。
アキラは当然、健介も生まれてくる孫も我が子であり、平等に愛することをヤスさんに言いますが、ヤスさんは「寂しい思いをさせてはダメだ」ということを主張し、もしアキラが生まれてくる子を一番愛したとしても、健介は自分が一番愛するから大丈夫ということを言います。
無骨な性格ながら、アキラを育てる過程で家族にとって何が大切かということを導き出すヤスさんの成長物語という意味で、後半の方が熱が上がってきました。
ただ、、、まあ久々に重松さんを読んだというのもありますが、とにかく登場人物たちが何度も涙を流す(家族ものという設定上なおさらかもしれませんが、)ところがちょっと味濃すぎというかお腹膨れるというか、途中で微妙に飽きてしまう感覚がありました。
心が汚れた大人になってしまった感があって若干悲しくなりました、、
もっと歳をとるとまた昔のような感覚になるのでしょうか、、
一番好きな『きみのともだち』は、もうしばらく温めておこうと思います。