『デッドエンドの思い出』 / よしもとばなな
★ × 90
内容(「BOOK」データベースより)
つらくて、どれほど切なくても、幸せはふいに訪れる。かけがえのない祝福の瞬間を鮮やかに描き、心の中の宝物を蘇らせてくれる珠玉の短篇集。
『小さないじわるを消すだけで - bookworm's digest』で久々によしもとばななさんに触れて、やっぱりこの人の感性はすごいなーと感じて読みたくなった、「最高傑作」と謳われた本作。
多分著者の本は10冊くらい読んだことありますが、『ツグミ』『みずうみ(2013/2/16投稿) - bookworm's digest』に次いでベスト3に入るくらい楽しめました。
全て女性が失恋した短編集で、各人なかなかに傷付いてはいるのですが、
それほどまでツラさを感じない理由は、主人公の周りには恋人がいなくなっても、支えになってくれる家族や男友達がなんだかんだで存在しててて、最後には暖かい感じになっているため。
もし現実世界で作中の主人公たち同様ズタズタに傷付いている人がいれば、その人から見れば「こんなに支えてくれる人いねえよ、恵まれやがって」なんてイラッとするのかもしれません。
けれど論点はそこじゃなくて、作中から伝わってくるのは「どんな絶望でも周りを見ればホラ!風が吹いてるよ」みたいな、要は当人の受け止め方次第で物事は変わるよ、ということでした。
それは随所に現れてて、例えば『幽霊の家』のワンシーン、
彼の気の優しさ、育ちのよさはいっしょに町を歩いているだけでよくわかった。子供が転べば「ああ、転んじゃった」という顔をするし、それを親が抱き上げれば「よかったなぁ」という表情になる。そういう素直な感覚はとにかく親から絶対的に大切な何かをもらっている人の特徴なのだ。
『デッドエンドの思い出』のワンシーン、
世の中には、人それぞれの数だけどん底の限界があるもん。俺や君の不幸なんて、比べ物にならないものがこの世にはたくさんあるし、そんなの味わったら俺たちなんてぺしゃんこになって、すぐに死んでしまう。けっこう甘くて幸せなところにいるんだから。でもそれは恥ずかしいことじゃないから。
こういった言葉を使って、落ち込んで視界が狭くなった人たちを著者が救おうとしている気持ちが伝わってくるので、それ即ち著者の人となりそのもので、結局よしもとさんすげえなーっていうとこに帰着しました笑
あと、主人公を救うべく現れるキャラ立った登場人物たちが妙に悟っていて、こんなこと現実で言う人いないだろうと若干訝しがりつつも、実際こんな人になりたいなぁと作品から啓発してくれる感じ、瀬尾まいこさんの作品にも通ずるところがありました。
結局はフィクションなのでどう頑張っても仮想世界ではあるんですが、下手にリアリティ出して中途半端より、こうやってちょっとファンタジーな人たちを描いた方が現実世界にフィードバックできるんだなぁというのも驚きです。
他にも高評価な過去の作品はいっぱいあるので読んでいこう。心が洗われました、オススメ!