『逡巡』 / せきしろ
★ × 85
内容(「BOOK」データベースより)
「実は私、あの時あなたに助けられた…」思いもよらぬ囁き。ということは、一連の行動は恩返しだったわけか/『バカ』。私の半生はこの一語に出会うまでの長い前振りだったのか/干上がる涙、空まわりする思い、神のご褒美、そして雪国の奇蹟…。自由律俳句、108文字の煩悩小説等で文藝の地平を広げる鬼才が紡ぐ日常と非日常、今昔と北の大地の物語。
引き続きせきしろさん。目次を見てびっくり、大量の短編が入った超短編集!
『ダイオウイカは知らないでしょう - bookworm's digest』で見せた短歌のように、短い文章に様々なストーリーを凝縮した、せきしろマジックな作品でした。
ほとんどの小説が、ありふれた展開が初めにあって、最後の2, 3文で急激に落とす(オチに持ってく)という感じで、オチというのが大体笑えるものか悲しい(或いはちょっと恐怖)もの。
前者だと例えば『放火』、
①主人公は放火を企んでいて、今夜いよいよ実行するためにライターを買いに行く。
②気合い入れてライター専門店に入ると、予想以上に様々な魅力あるライターに魅了され、放火のことを忘れてライターの収集家となった。
③その後収集したライターを売り払って引退し、今は有機野菜を栽培して暮らしている。
というもの。なんじゃそりゃ笑
勝手なイメージですが、①から②までは何か他の作家でも読んだことあるような感じの展開ですが、
最後の③、これがたったの1文ですが、②にもう1つ加えるところが特徴的だなぁと思いました。
あーー今書きながら思ったけど、バナナマンや東京03のコントのような作りになってるものが多い気がしました。放送作家のよう。
あと後者で言えば、2章『野球チームを作りたいがあと八人足りない』に収録されている短編は大体物悲しく、個人的には悲しい文章の方が更にせきしろさんの魅力が詰まっているような気がします(本人のバックボーンとか知ってから読んでるからかもしれませんが)。
こういう作品は1冊にまとまると流石にちょっと飽きが来ますが、寝る前にちょくちょく摘むくらいでちょうどいいかもしれません。
次もせきしろさん!