昨年末に買ったのに年度末にようやく読み終わった。なんとか17年度には間に合った、、途中空いたのは忙しさにかまけて軽い本に逃げたのもあるが、それほど重厚感のある小説やった。特に後半3分の1は何も考えられない状態になるような崇高さがあった。
話はタイトルが物語ってる通り、アウシュビッツ収容所内で図書係となった主人公ディタが、本来囚人には禁止されてる「読書」という行為を命懸けで守り抜く設定。本を読む行為は即ち物事を考えるようになってしまうことにあたるため、自らが置かれた状況に疑問を持ってしまうというのが支配する側のドイツの考え。けどディタは違う世界を見て、何かを感じ考えることを辞めたくないという意志を持って図書係を遂行する。前半はアウシュビッツという最悪な環境でも前を向くディタ始め登場人物たちに元気もらえるいい作品風に仕上がってると感じた。
けど後半、ディタの父親が病気で死んだくらいからの世界は文字通り地獄。読み進めるのが辛いというのはこうゆうことを言う。何が辛いって、笑いながら容赦なく選別され、命がけで逃げたと思った刹那捕まって殺され、人が人と扱われない、尊厳全部損なわれたこの世界がほぼ実話ベースで描かれてるということ。ディタも友だちのマルギットも実在するし、死体が積み上がりすぎて処理できずトレーラーで無かったことにする世界も確かにかつて存在したということ。終盤は余りに死が当たり前すぎて読んでて麻痺してきて、例えばディタが終戦まで母親と生き延びられたことが少し違和感になるほどやった。印象的やったのが、ディタがある女性軍隊を見て「あの人ももしかしたら立場が違えばただの美容師だったかもしれない。けれど今こうやって平気で人を日々殺し続けている」みたいに感じたシーン。要は壮大な麻痺や勘違いみたいなものなんかな戦争って。些細なズレが積み重なって、ふと気づくと世界全体で勘違いしながら目の前の人を憎んで、死に対する恐怖や敷居がおかしなってしまう。読みながらそう考えてた。
去年までブログで読んだ本に対して勝手に点数とか付けてたけど、その尺度はこれまで読んだことなかったり、これまでの価値観を変えてくれたりしたかというものやった。そういう意味やと本作は100点やった。あとがきには、作中の人物が全て実在の人物で、アウシュビッツののちどうなったかが詳細に書いてある。エンタメとしては読めないエンタメ、というのも新しかった。17年度締め本、読めてよかった。