ブレイディみかこさんの英国在住エッセイ『ブロークン・ブリテンに聞け』読了。傑作!!
2018年から2020年までの連載をまとめたもの。EU離脱や新型コロナウィルスなど、時代の大変革の時々で綴った著者のコラムは、「他国を知って自国を知る」を地でいく、まさに生き証人のような感覚で読めて素晴らしかった。
序盤のUKコメディに関する考察。『Damned』という番組は、ソーシャルワーカーに子どもを取り上げられる設定だが、子どもを育てる側の親も多大な問題を抱えているという、登場人物みな崩壊気味のブラックユーモアコメディらしいが、著者はこの番組について
ブロークン・ブリテン上等、と言わんばかりのこのやけくそのユニティーがいいことなのか悪いことなのかはわからない。だがきっと「いいこと」か「悪いこと」かをすぐ問う習性自体がせせこましい人心のデフレ時代を象徴しているのだ。
と書いている。正義と悪、白と黒を分けたがる現代ではユーモアは成り立たず、むしろ全員悪、全員黒のこの番組の出現こそ時代の変化の兆しであり、人でなし上等・アナーキーで行こうと煽る。カッコよすぎ!確かにIT / DX社会で安全になる一方、どこでも監視され正義然とした佇まいが常時求められる風潮はそろそろピークアウトしそうな、結局こういうのは輪廻するというか、またダウンタウンが評価される時代が来るというか笑、そんなことをこれを読んで思った。
あと噂では聞いていたが、英国はなかなか終わってる。日本だけじゃなく、先進国はどこの政治もコロナも生活保護もこんなかと、他国を知れたことがよかった。海外事情は大概翻訳を介して知ることが多いが、日本生まれの、それも文才秀でた著者のような方が海外に在住しながら日本語で現地をレポートするというのはそうそうないので、分子生物学を教えてくれた福岡伸一さんばりに、いろんな分野でいろんな文筆家の方がこんな風に文字に起こしてほしいなと欲が出た。やっぱ読書サイコー!