荻上チキさん『みらいめがね それでは息がつまるので』読了。挿絵は我らがヨシタケさん。
俺ん中でチキさんはpodcastでしか知らない「天の声の人」的な人で、すきとおりすけのすけの如く体の輪郭くらいしかイメージなかったけど、本を読んで一気に目鼻顔や感情が浮かび上がったかのようやった(ネット無かった時代にラジオパーソナリティや声優に恋するとかってこんな感じ?)。それくらい、チキさんを知らなかったことを自覚した。
学生時代にイジメを受け、今も躁鬱状態で、離婚経験があって、発達障害の子どもが2人いること。podcastで語られるあの切り口は、そんなバックボーンの上に成り立ってたんだということに衝撃を受けた。本書はエッセイなんで基本的にはチキさんの経験をもとに書かれてるけど、柔和な言葉の裏に得も言われぬ怒りや悲しみみたいのものも纏ってて、そこはpodcastと同じ感じ。
刺さったのは自分が鬱になった時、それまでどれだけ当事者のことを理解しないままインタビューや評論してたのかと自覚するところ。podcastでも度々社会的弱者、例えば最近やとコロナ禍で職を失った方とかを取り上げたりするけど、その方達への寄り添い方が薄っぺらなものでないと聴きながら感じるその理由は、チキさん自身がこれまである意味で当事者だったからということに気づく。けどそれを悲観するだけではなく、だからこそ自分の価値観が広がってるのだというところまで持ってく様にめっちゃ元気もらえたし震えた。
あとはやっぱ最後の「生きづらさを取り除け」の章。右ならえ精神論で物事が進む学校社会についていけず登校拒否となった実の子供たちに向けた力強いメッセージ、もうめちゃめちゃ心打たれたし、人はなぜこんなにも長いものに巻かれてマイノリティを排除する生き物なのか無力感感じるし、子を持つ親世代がせーのでこの本を同時に読めば少しだけでも世界は変わるだろうか、と思った。
何もかもに、その考えを押し付けるな。何も知らないくせに、勝手に噂するな。何もしないくせに、土足で踏み荒らすな。何も疑わないままに、そこから査定するな。こうやって生きているんだ。何が悪い。