レビュー6本ノック、、後半!
辻山良雄さん『本屋、はじめました』
荻窪にある本屋「Title」の店長である著者が、大手書店の店員から個人経営の本屋を始めるまでを綴ったもの。戦略や必要コストなど事細かに書いてあるので、著者のように「本屋になろう!」という人はマジで必読本となってる。そして同じく近頃のブルシットジョブに嫌気が指し、ふとした時に「本屋なりたい、、」と心によぎるsomebody、つまり俺にとってもビンビンに刺激されて困る。
とは言え本書は「本屋ええですよ」一辺倒では決してなく、むしろ「ここまで大変な思いをして、それでも本屋になりたかったらどうぞ」のトーンをとってるところが良い。著者も基本は朝から夜21時まで営業し、休日は週1、アルバイトはなくカフェは妻が担当、という公私境目なく仕事漬けの日々を送ってるし、そもそもやっぱ本屋業自体斜陽で、それでも尚この仕事が楽しいんですと言える、その芯の強さがないとやってられないよと釘を刺してる。
響いたのは趣味を仕事に昇華させる上でのメッセージ。
課外活動でも自分の仕事に何か活かせるものがなければ、それはよくある趣味に終わってしまいます。しかしそこで得た人のつながりやスキルなどを、会社員としてやるべき仕事に活かしていくことができれば、他の人も認めざるを得ない得意技になっていきます。
いきなり本屋にならずとも、まずは古本市などで本を手に取ってもらう喜びを知るところから始めよう、、
キムハナ、ファンソヌ共著『女ふたり、暮らしています。』
性格も趣味も異なる著者ふたりが共同生活を交互に綴ったエッセイ。読んでる最中、純粋に、こんな人生もあったのかなと思い馳せらせトリップした。ベクトルは違うが最近ハマってる蛙亭のイワクラが、オズワルドの伊藤含む四人の芸人とルームシェアしてて、自身のYouTubeチャンネルで日常を流してて、それ見てる時の感じとも重なった。
相似点が人を互いに引きつけ合い、相違点が互いの間を埋めてくれる。私とよく似た人がこの世に存在したとして、果たしてその人と私はよい同居人になり得ただろうか。
他人と暮らすことで必ず自分の価値観やルーチンは揺さぶられるし、それを億劫に思う気持ちはめっっっちゃわかるけど、そういうネガティブモードの人が読めば間違いなく刺さる1冊。
余談:ただちょっとダラダラしてて眠くなる。実際電車で読んでる最中寝てしまい、最寄駅に着いて慌てて降りたら本を電車に忘れるという失態を犯した。そういう意味では忘れられない1冊となった。
『群像 2021年10月号』
今年のベストプレイス第一位、近所の本屋さん『1003』の店長である奥村千織さんがエッセイを寄稿されてるてことで即買い。店長に「お客様、実はちょっと出てます」と言われ、読んでみると、確かに「ベビーカーを引いた男性がフェミニズムのコーナーで本を選んでいる」といった一節があり、それが俺だった。高橋源一郎が寄稿する本にまさか出演できる日が来るとは。。!!奥村さんに感謝。錚々たる面々が並ぶが、やはり芥川賞候補となったくどうれいんさん、素晴らしくうまく光っていた。