雁須磨子さん『あした死ぬには、』2〜4巻読了で完結。素晴らしかった、、、漫画ジャパン恐るべし!
主人公・本奈さんと学生時代の同級生の計3人の視点で、42歳となった各々の物語が進む構成。仕事の過労で倒れたり、独身で親にパラサイトしてる中で親が病気で倒れたり、恋心芽生えた男性がガンで余命宣告されてたりと、内容は中々にヘビィなものが続くが、執着しすぎないユーモアセンスや力の抜けた絵のタッチなど、個人的に大好きなエレメント詰まりまくりド真ん中漫画で一気に読めた。
どういった観点で本作が人気なんかは知らんけど、個人的には、世に溢れる微妙な言説をユーモアたっぷりに可愛く切り裂いていく(?)感覚ってのが素晴らしかった。例えば1巻で旧姓・野崎さんが20代の同僚アルバイトに
「僕はオバさんだとは思わないですよ」
と言われるシーン。野崎さんは一瞬嬉しい気持ちになったのちに、私はちゃんとオバさんでいなきゃ、という気持ちになる。
このシーン、一見分からなかった。というかこういう「ぼくは〇〇だとは思わない」という、〇〇には否定系のワードが入る逆説的な肯定って、世の中に溢れてるし恋愛作品の鉄板文句となってる気がする。けどここでちょっと立ち止まりたくなるのは
「そもそもオバさん=悪いというロジックの上でのこの発言」
と取れるから。
みんながオバさんだと思っている→オバさんという言葉に悲しんでいる→僕はオバさんだと思ってない(=恋愛対象だ)
みたいな等式が成り立つんやけど、多分2個目の「オバさんという言葉に悲しんでいる」というロジックがよくないのだと思う。
、、と、いちいち立ち止まりたくなる、作中では解説しすぎない表現がこの漫画には多すぎて、今後何度読んでも新しい発見がある気がする。上記の例なんかは言葉こねくり回してるだけで、じゃあ結局なんて言うのが正解やねんと紋切りたくなる自分もいる。けど、こんなふうに言葉や人間関係は驚くほど難しいものなのだ、という面倒くささを、驚くほど読みやすいタッチで伝えてくるのがこの漫画のスゴいとこ(と、個人的に思います)。
4巻の最後はハッピーともバッドともつかない締め方で、白黒でなくグレーを匂わすそのトーンもまた好き。最後の最後3人で会うシーンも、もっとドラマチックに描こうと思えば描けるのにアッサリしてて実に素晴らしい。雁須磨子さん、知らんかったけどマジ要チェキ人物、、!オヌヌメです