植本一子さん『愛は時間がかかる』一気に読了。うごーーーーー, すごいパワー!!
4年ぶりの単行本らしいが、その間に出てたZINEや自費出版を読んでたので久しぶり感はなかった。
これまでのエッセイでも時々描かれてた苦しい感情を軽減するべく、「EMDR」という、過去負ったネガティブな経験を脳から排除するようなトラウマ療法を受ける話。最初発表された時は中身的にめっちゃ惹きつけられたが、ラップスタア誕生でR指定が昔言ってた「過去を掘り下げるのは自傷行為」的な言葉を思い出し、恐らく苦しい描写も多いやろな・・・と最初少し買うのを躊躇してた。が、やはり我慢できなくなって読み始めると一気に引き込まれた。。
構成としては数回にわたる治療そのものの話がメインで、そもそも治療法自体の効能やハウツーなど、実体験を元にした教養本としても普通に興味深い。ただそれ以上にすごいと思ったのは治療後の描写。病院の帰り道の心情や情景をこんなにも緻密に描かれてる文章を初めて読んだ。
話逸れるが、自分自身も心療内科にはかれこれ15年以上通ってる。本作のように1, 2時間もかかるものではなく、一般診療で10分くらいで終わるものやけど、それでも心療内科からの帰り道はどこかスッキリしてたり、どこかしら自分が強くなった錯覚に陥ってることが多い。プロの先生と話す経験がそうさせるんやろうけど、それって個人の物凄く定性的な感覚でしかないから、特に誰と共有するでもないものやった。けど今回、病院からの帰り道が何かいつもとは違う、書き留めておきたい心情の変化があるということを初めて可視化された気がして、やっぱすげええええええと感動した。
冒頭書いた苦しい描写は、たしかにあった。特に母親との関係性とエピソードを題材にして治療する章は、眼と手にグッと力入ったし、読み終わったあとだいぶ疲れた。
ここまで引き込まれる力があるのは、著者の経験と完全合致とまではいかないまでも、多かれ少なかれみんなこうやって人間関係で傷ついたことがあるから、それを追体験してるような感覚になるからやと思う。作中でも、傷の大きさは関係なく、本人が傷と感じたらそれは傷、みたいなメッセージがあったが正にそれ。治療を考えてる人のみならず、誰が読んでも背中押してもらえる感覚味わえる。
不安がない人なんていないんだ。これまで私は、なんとか自分を守るためにも、それを乗り越えなければいけないと思っていた。いつか平気にならなければ、と。
この感情をとことん忌み嫌っていたけれど、ごくごく自然なものだった。その不安はご自身を守ってきたものでもあるから、大事にされたらいいと思いますよ、