『何歳まで生きますか?』 / 前田隆弘
★ × 90
最近読んでなかなか考えさせられた一冊です。
なんだか「<人生のモデルコース>から外れることを異常に恐れて生きている」みたいな世の中の空気は、たしかにある。ここに登場する人たちの死生観は本当にバラバラなのだが、「自分の生を生きている」という点では共通している。これを読むことで、自分の生を生きるためのヒントになるものを見つけてくれたらうれしく思う。
(まえがきより)
フリーのライターである前田隆弘さんと、同じく40歳近くを生きる人たちの対談。お相手は
二階堂和美さん、向井秀徳さん、雨宮まみさん、phaさん、石井光太さん、真鍋昌平、入江悠さん、久保ミツロウさん、東浩紀さん、金子平民さん、渋谷慶一郎さん
という、ミュージシャンや作家など「表現者」が多いです。
その時点で「あぁ、何となく予めゴールを想定した本なのかぁ」と舐めてかかりましたが、まえがきにあるとおり、本当に各人の死生観はバラバラでした。
どれだけバラバラかというと、私個人はまず、二階堂和美さんの1回目の対談に非常に感銘を受けたんですね。
それで物凄く期待値が高まったのですが、途中(名は明かしませんが)ある人物の対談が、もうイライライライラしたんです。
その原因は単純に共感できなかったというだけなのですが、読みながらふと、「あぁ、死生観なんて人それぞれで然るべきだよな」と、すとんと落ち着きました。
二階堂さんの他に、真鍋さん、久保さん、東さんの対談も良かったです。
特に東さんの、時間の感覚や生の執着心の話に非常に共感を感じました。
刹那的に「無意味に突然終わる」という感覚、だから「長期でローンを組む」とかの発想力が薄い、という感覚。
私自身周りの人が突然消えた経験は無いので、この感覚はいつどこから得たものかは分かりませんが、
普段度々意識するのが、例えば運転中に気を失ったら死ぬなぁ、とか、そんな感覚。
本作ではその後の展開で、そういった不条理を素直に受け止めることを肯定されていますが、この感覚ってやっぱりあまり推奨されるべきものではないですよね。
例えば貯蓄や結婚や仕事や住居や、とにかく将来への漠然とした不安を、突き詰め出すと不安になるから「漠然とした不安」のまま置いておきがち、という、何ともフリースピリットな佇まい笑。
これはもう少し真面目に考えないとなぁ、と心では分かっているものの実行に移せない弱さ。
けれど東浩紀さんみたいな思想魔人でもこういった感覚は当たり前にあるんだなぁ、と、少し背中を押された気持ちになりました。
日々目にする死生観って、やっぱり老いてから「それでもなお、貴方は輝ける」のようなイマイチピンと来ない作品が多いですが、本作はなかなかに若い切り口で作られているので、スッと受け入れやすいです。
あまりセンスを感じないタイトルと装丁ですが、内容は素晴らしいのでおススメ。