『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上)』 / 増田俊也
★ × 88
内容(「BOOK」データベースより)
15年不敗、13年連続日本一。「木村の前に木村なく、木村のあとに木村なし」と謳われた伝説の柔道王・木村政彦。「鬼の牛島」と呼ばれた、戦前のスーパースター牛島辰熊に才能を見出され、半死半生の猛練習の結果、師弟悲願の天覧試合を制する。しかし戦争を境に運命の歯車は軋み始めた。GHQは柔道を禁じ、牛島はプロ柔道を試みるが…。最強の“鬼”が背負った哀しき人生に迫る。
けれど根本はミーハー、「キムラロック」の由来も知らずにエキサイトするだけのにわかファンな自分は、本書をもっと早く手に取るべきでした。
とりあえず上巻のレビューですが…いやー、面白い!!まだ半分もあるという幸福…。
上巻は戦前の生れである木村の青春時代から最強と呼ばれる隆盛期、そして戦中の混乱を経て、戦後ブラジルに渡りプロレスに傾倒する…というところまで描かれています。
私のような、そもそも木村という柔道家が一体なにをしでかした男なのか知らない人間は、この構成に惹きこまれざるを得ません。
全日本選手権13年連続保持、天覧試合優勝も含め、15年間不敗のまま引退。「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と讃えられ、現在においても史上最強の柔道家と称されることが多い。
師である牛島も「鬼」と呼ばれるほどの強さを誇り、寝技においては参ったではなく失神して初めて 1ターム終了、しかも目を覚ますや否や次のタームに移る稽古。
今どこかの高校でこんなことが行われていたら一発で懲戒免職という、時代だなぁと言わざるを得ない徹頭徹尾男臭の漂う世界です。
もうそれが、リアルグラップラー刃牙としか言いようがなくアガる!!!
んで、昨今のルールに縛られたストレスフルな柔道と異なり、当時は「殺人武術」、判定のないバーリトゥードであったことから、木村は柔道で最強に留まらず、それこそ霊長類最強の男だったことが窺えます。
例えば戦中、日本人を侮辱するアメリカ兵を許せず、一瞬で4人を叩きのめしたことや、プロボクサーに柔道を教えている最中、いつの間にかプロボクサーにボクシングを教わる側に立ち、1年でプロレベルのボクテクを習得したというエピソード、
これらはまさに柔道の世界に収まりきらない木村の最強度合を表しています。
こんな日本人がいたなんて、ゆとり世代の俺がアガらない訳ないじゃないか!!
そして上巻の締め方が正に血湧き肉踊る。
時代は終戦後、ブラジルにおいてブラジル人から肉体的にも精神的にも迫害を受けざるを得なかった日系人たち。
そんな中であのエリオグレイシーが圧倒的強さを誇って、日本の柔道が鼻で笑われていた時代。
木村は、そんな最中にブラジルを訪れますが、それを以下のように描写し終結します。
さっ、下巻読もっと!!
木村政彦がブラジルにやってきたのは、まさにそんなときだった。柔道日本一、天覧試合制覇の鬼の木村がやってくるのだ。15年不敗の王者木村がやってくるのだ。