『アズミ・ハルコは行方不明』 / 山内マリコ
★ × 85
内容(「BOOK」データベースより)
地元で再会した3人組が、遊びではじめた人探し。彼女はどうして消えちゃった?大丈夫、わたしが見つけるから。『ここは退屈迎えに来て』で注目の新鋭が書き下ろす、ポップでミステリアスな無敵のガールズ小説!
『ここは退屈迎えに来て』で鮮烈デビューを飾った山内マリコさん、昨年末に出た2作目の小説です。
前作はタイトルも装丁もキレッキレの魅力全開でしたが今回も然り。
是非とも単行本で買って本棚前面に置いておきたい小説。
前作同様、地方に住む上での前提条件である「世界の狭さ」「居心地の良さ」みたいな空気感が全面に出た作品です。
27歳となったかつて同級生である男女の物語。
ストーリー的にはあまり語るものがないので、以下は人物と構成について主に書きます。
出てくる登場人物は、アズミハルコの会社の人間を除けばほぼほぼ同級生のみで構成されており、その中で愛し合ったり憎み合ったり、卒業して10年経って未だにママゴトやってんじゃねえよと言いたくなる程スモールワールドに暮らす人々。
特に愛菜という女がキョーレツにそれを体現しててサイコー!
かつての同級生と未だにツルみたがってすぐ股を開き、仲間外れにされたと気づいたら自殺に追い込まれるほど自我が崩壊する。
イタいを通り越して笑っちゃうのですが、現実に置き換えると程度は違えど案外周囲に、そして自分自身にも愛菜の要素を多少なりとも感じる部分あって、そこがヒジョーに辛辣でした。
多分その一端を担っているのが、作中にも出てくるFacebookの効能なのですが、とっくに切れたはずのかつての友人の近況を電話で話したかのように詳細にフォローでき、焦り嫉み比較できてしまう世の中だからこそ、愛菜みたいな女を非情に笑えないのでしょう。。あー恐い、疲れる。
本作は前作ほど切れ味鋭くなく、どちらかというとプロットに重きを置いているのも、新しい山内マリコさんを味わえて良かったです。
特にタイトルであるアズミハルコ、彼女は『桐島、部活やめるってよ』の桐島如く姿を現さない訳ではなく、同級生としてフツーに出てきますが、彼女の章はそこだけ切り取って短編になるくらい物語として出来上がっていました。
クソみたいな会社でセクハラとパワハラを受け、実家暮らしと田舎暮らしの窮屈さに苛まれた彼女の描写には、山内マリコさん独特の皮肉が表現されていてとても良かったです。
終盤に出てくる彼女の物語は少しSFがかっていてあまり好きじゃなかったので、中盤あたりオススメです。
あまり物語のレビューにはなっていませんが…
山内マリコさんは勝手に、批評家やコラムニストとしての書き手として売れていく人だと思っていたのですが、本作を読んで小説家として今後も広く作品を出していってほしいと感じました。