『けむたい後輩』 / 柚木麻子
★ × 82
女は、みんな“自分”が大好き。
気は強いが、傷つきやすい彼女たちが欲しいのは、“自信”だった。
良家の子女が集まる女子大を舞台に元・有名人の自意識過剰な先輩と世間知らずのダサい後輩が繰り広げるエゴのぶつけ合い。
金持ちで、才能をもてあまし、男にのめりこむ「栞子」は、ダサくて真面目な後輩・「真実子」の憧れのひと。優越感で満たされていたはずの栞子が抱く苛立ちと哀しみ、そして次第に明かされる真実子の稀有な才能。自分の魅力に気付けない女子大生の繊細な心模様をコミカルに描いた共感度100%の成長物語。
内容(「BOOK」データベースより)
窪美澄さんや樋口雄宏さんのツイッターを追っていると、度々出てくる作家・柚木麻子さんに初挑戦しました。
ダサい後輩・真実子に慕われる栞子と、真実子の幼馴染の美里の二人称で物語が進みますが、とにかく栞子が終始痛々しくてなりません。
自分がここまでイタいとは(自分では)思いませんが、少なからず栞子のように己に酔うというか、悦に入るという感覚はたまにある。
栞子は映画の評論や他人に料理を振る舞う際にその感覚はピークに達していますが、自分に置き換えると例えば感銘を受けた本について語る時、仕事がいかに忙しいか自慢している時、普段自分はこう考えているのだと人に伝えている時、こんな場面、私は美里から見た栞子のような人間になっている。
それによって刹那的に快感を味わえるのならそれでいいのだとは思いますが、そんな時自分は、一体他の人の目にどう映っているのだろう…
「気取ってはいけない、悟られてはいけない」と抑えている時点で、もう滲み出ているんだろうか。
とまあ、女性作家特有の鋭い視点で抉られた印象がありました。
終わり方も狂った人形のようにぐちゃぐちゃで面白い。
ユーモアが少し過ぎる場面ありますが、「良い奴はいいし悪い奴は悪い」と線引きされた、白黒はっきりした小説でした。
あと途中、真実子が語るTV論について成程なぁと納得しました。
一概に、口を揃えて一方向に「TVが面白くない」というのはやっぱりダサい。
自分で感じて、考えてそれでも結果TVが面白くないのなら「TVが面白くない」と主張しよう。