『野心のすすめ』 / 林真理子
★ × 88
「有名になりたい」「作家になりたい」「結婚したい」「子どもが欲しい」 ――無理と言われた願望をすべて叶えてきた人気作家による「夢を実現させるヒント」。 「やってしまったことの後悔は日々小さくなるが、 やらなかったことの後悔は日々大きくなる」をモットーとする作家・林真理子。 中学時代はいじめられっ子、その後もずっと怠け者だった自分が、 なぜ強い野心を持つ人間になったのか。 全敗した就職試験、電気コタツで震えたどん底時代を経て、 『ルンルンを買っておうちに帰ろう』での鮮烈なデビュー、その後のバッシングを振り返り、 野心まる出しだった過去の自分に少し赤面しながらも、“低め安定”の世の中にあえて「野心」の必要性を説く。
情熱大陸で観た林真理子さんが想像以上に興味深くて、作品名やコラムで抱いていた偏屈な先入観を変えなくちゃと思い本書を手に取りました。
食わず嫌いが先行する性は治さなきゃいけませんが、こうやって作家のバックボーンを知った上で作品に触れることだけでも続けねば…。
さて肝心の内容ですが、思っていたよりもずっと丁寧な文章でびっくりしました。
けれど基本的には、綺麗な理屈で納得しようとしても、どうしようも説明がつかない領域の真理をびしびし突いてくる内容です。
たとえば美人とブスの隔たりは大きくて、綺麗だったら不倫して然るべき、ちやほやされたければ女子アナやCAになれ…だとか、少し古典的だけれど読み応えがあります。
まあこれって歴史は繰り返すでは無いですが、「あるがままを認めよう社会」を迎えて長らくの今だからこそ、こういったカウンターパンチが新鮮に感じるのかなぁとも思いますが。
ひと昔前に本書が売れたかと言われればそうでも無い気がする、なぜならひと昔前じゃ当たり前なことを言っているだけだから。
…と言ってしまうとレビューの意味がありませんが、この売れ方は勿論、林さんの魅力に起因していることは確かです。
特に若者に向けた発破のかけ方が、きちんと理論だっていて面白い。
「流されるままに坦々と生きている人と、泥臭くてもお金をもぎ取って己に投資する人ではどっちが幸せか?
こたえのない問いですが、私は後者だと思います、なぜならかくかくしかじかで…」
という構成の啓発が延々と続きます(もはやある種の洗脳笑)。
あと、これだけワーカホリックなイメージのある著者ですが、結婚論については100%肯定派であることも意外でした。
人間が充足感を得られるのは、「自分の代わりがいない」という確信を社会のなかで得られた時であり、それは仕事からだけでなく、旦那から、息子娘からも得られるものである、という考え。
個人的には一番好きな箇所かもしれません。
読後に林さんの貪欲さのイメージが変わったかと言われれば、むしろ増長する方向に変わった気がします。
けれどいい意味で!いい意味で変わったんです。
売れるのも納得の作品でした。