『僕は君たちに武器を配りたい』 / 滝本哲史
★ × 85
内容(「BOOK」データベースより)
これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非情で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである。20代が生き残るための思考法。
半年程前、村上龍さんの『最後の家族』を読んで以降、小説の面白さを再認してからひたすらにフィクションにのめり込んでいましたが、
社会に出てそろそろ3年が過ぎようとしている今、1日の半分を会社で費やすサラリーマンとしてもう少し自己を見つめ直す必要があるかなと思い、就活時代に周囲でプチブームとなっていた本書を手に取ってみました。
ビジネス書はいつぶりだろうか…南場さんの『不格好経営』を去年の春ごろに読んだ以来?
「まとめ」世代よろしく、各章の終わりごとに要点のみを1頁まるまるデカ文字で載せているような、教科書のようなビジネス書でした。
本書は京都大学の教授である著者が、大学生、或は社会に出て数年経った(つまり私のような)若手を対象にお送りする、ここが変だよ日本人的内容。
故に「ブラック企業」などの言葉が踊るような平易な文章で、就職活動中の大学生にも読みやすくなっています。
ただ内容の大半は社会人的感覚といいますか、ある程度歯車となって勤労して初めて思う感情がベースとなって展開されているので、個人的には大学生というよりは、やはり30手前のサラリーマン、言葉は悪いですが「人生やり直しまだ効くよ」世代に読まれるのがベターであると感じました。
3,4章辺りはそれが顕著で、捻れた資本主義の実体と在り方、今後生き抜く上で脱・松下幸之助が如何に大切かを説いた本章ですが、会社選びの際にこれらの情報が役立つというより、会社生活を経てこれらに気付き、本書で言語化してもらう、という方が多いのかと思います、少なくとも私はそう。
頭が痛かったのが
今はニッチな市場だが、現時点で自分が飛び込めば、数年後に10倍か20倍の規模になっているかもしれないというミクロな視点で考えることだ。まだ世間の人が気づいていないその市場にいち早く気づくことだ。
という言葉。
一応開発者の端くれで、3年も経てば何となく会社の流れも見えてきますが、とにかくキャッチアップ、人まねでコスト減を掲げて勝負する姿勢が根付いてしまっているというか、なら私に何かできるかと言ったら言葉も出ませんが、そんな空気が蔓延しています。
別に嫌いじゃないのですが、「嫌いじゃない」という姿勢がもうマズいのだろうな、ということを本書を読んで分かりました。
んで、そのあとは今後どう生き抜いていくべきか、働き方を4種に分類して説明していますが、この辺りは言葉は悪いですが在り来たりなことが書かれていて、初めてビジネス書を読むならまだしも、メディアや本である程度国内の厳しさを感じている人であれば特に読む必要はないんじゃないかと思います。(文章自体はとても上手です。)
たまに読む程度の電車本としては十分楽しめました。
ただタイトルの印象が先行しすぎて、もう少しパンチが効いていればと少し残念。