『ルック・バック・イン・アンガー』 / 樋口毅宏
★ × 78
この鬱屈、この暴力、この叙情――これは、90年代から2000年代初頭にかけての、アダルト本出版社の物語。
(「BOOK」データベースより)
ここまで性、暴力、性、性、性、暴力、、、の連鎖で成る小説はかなり久しぶりでした。
特に表題作第4章「どじょうの夢」のそれは執拗で、正直辟易する場面も多々有り…
それでも続きが気になるのは、映画を観るように本を読ませる、という感覚を本作も味わえるからです。
人が2頁かけて描く一場面を、樋口さんは1/2頁くらいで描いてしまうから、物凄くスピード感がある。
かなり残忍な描写でもそこに一切の躊躇はなく、まるで朝起きてコーヒーを飲む緩やかな描写のように淡々と進む。
それは物凄く冷徹に感じますが、このキリキリ感から目を離せなくなってしまう。
成る程、樋口作品こうやって楽しめば良いのか。
例えは悪いですが、「アジョシ」という韓国映画を観終えた時の状態に似てます。
恐ろしく密度の濃いエンタメながら、後には何も残らない、はっきりした芸術。
どうしても読書に何らかの意味を持たせたくなるのですが、そんな自分を忘れさせてくれました。
あと、先ほども述べましたがとにかくエロくてグロい。
「エロくてグロい作品は社会的と呼ばれやすいのか?」と、昔からずっと疑問でした。
特に村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」を読んだ時、なぜこれが名著と謳われるのか全く理解できませんでした。
その気持ちは今も持っていますが、本作を読んで、人間の生臭さ・生と性への執着心を抉り取る役割として、やっぱりエログロは必要なのかなぁ、と少し理解できた気がします。