- 作者: みうらじゅん
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/05/14
- メディア: 新書
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『マイ仏教』 / みうらじゅん
★ × 92
内容(「BOOK」データベースより)
人生は苦。世の中は諸行無常。でも、「そこがいいんじゃない!」と唱えれば、きっと明るい未来が見えてくる。住職を夢見ていた仏像少年時代、青春という名の「荒行」、大人になって再燃した仏像ブーム。辛いときや苦しいとき、いつもそこには仏教があった。グッとくる仏像、煩悩まみれの自分と付き合う方法、地獄ブームと後ろメタファー、ご機嫌な菩薩行…。その意外な魅力や面白さを伝える、M・J流仏教入門。
『人生エロエロ』からの『百万円と苦虫女』とたまたま続けて鑑賞した後、心にフッと浮かんだのは本書。
2年前に読みましたがずっと印象に残っており、ここ数年間私が思うモヤモヤを、小池龍之介さん同様晴らしてくれる作品です。
要所要所は覚えていましたが、細かい点読み返しやはり良書!と仏教再燃しました。
本書は仏教にまつわるみうらじゅんさんの自伝×啓発本。
幼い頃から仏像に興味を持ち、カメラ片手に寺社を廻ってはスクラップし何冊もの本を作成していたみうらさんは、必然的に仏教にも没頭していく。
そこは、細分化された地獄(現世で牛と性交したものが堕ちる地獄….etc)など中二病宜しくトンデモ概念が渦巻く世界ですが、
数千年間数えきれぬ人々の信仰、コアとなる部分であり続けたのも事実。
フォルムとしてのCOOLさに単純に惹かれていた著者が、徐々にその成り立ち、思想にも没入していく姿描かれています。
本書の良書たる所以はまず、他みうら作品同様、圧倒的にコメディとして成り立っていること。
仏教、を題材にここまで前半笑わせてくれる文章、他に誰が書けるねん!
「後ろメタファー」「不安タスティック」「比較三原則」など言葉のセンス、狙いに言ってるの分かってるのに、なんか笑っちゃうし、なんか腑に落ちる感じ。
んで、2年前読んだときにもっとも印象的だったのは「自分なくし」という言葉。
『百万円と苦虫女』やTOMOVSKYの『自分らしさなんて』という曲、そして本書で伝えられる「全部自分だ」という概念は、当時もそうですし、今読んでも日常にフィードバックして考えを改めたくなる程パンチ効いてます。
ただ、
2年ぶりに読んでみてより強く印象に残ったのは最後数頁、 そして「マイ仏教」というタイトルそのものでした。
そもそも仏教とは、一つの思想のもとに多くの人が信仰しているもので、
個を表す「マイ」という言葉とは相反する意味を持ちます。
けれど最後に著者は、「比較三原則」という造語を使い、この意味を説いています。
悩みの根元の殆どは他人との比較にあり、そこを理解するだけで楽になれることが多い。
そこからのステップは、自分をどう納得させるか。
「宗教」というとそれだけで敬遠してしまうが、己のなかにそれぞれの住職、菩薩を住まわせ、気持ちが落ちたときに自分だけのマイ住職が「そこがいいんじゃない!」と笑い飛ばす。
それは外から誰も見ることのできない、歴とした「宗教」であるーー…
メタじゃない、極めて個に執着した本なのにちゃんと仏教本。
併せてみうらじゅんさんの哲学の一角も味わえる、素晴らしい作品です!是非どうぞ