- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2007/06/23
- メディア: 文庫
- 購入: 13人 クリック: 172回
- この商品を含むブログ (523件) を見る
★ × 84
内容(「BOOK」データベースより)
「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。
『ゴールデンスランバー』以来の伊坂さんでした。
伊坂作品はかれこれ8年ほど、忘れた頃に読むという程度の頻度で読んでいますが、毎度そのオンリーワンっぷりに打ちのめされます。
本作もそうで、個人的には1冊の小説を1日で読む、という数年ぶりの爆裂スピードで一気に読み終えました。
物語は一般人の鈴木、それに殺し屋の鯨(クジラ)と蝉(セミ)という異名の男二人、合わせて3人の視点から入れ替わり描かれています。
序盤は各人の距離間が離れた地点から始まり、時間軸に従い徐々に距離を詰め、あるところで急回転して絡み合うという、 あまり覚えていませんが『ラッシュライフ』に似た構成になっています。とても映画的。
本作が結構驚きなのが、最初から最後まで人がパンパン死んでいく点。
しかもそれぞれの死に特に含みなく、拷問やドンパチで無機質にトんでいく様は、今まで読んだ伊坂作品とはかなり異なる所でした。
主人公鈴木は、妻を轢き殺した加害者が何故か罪に問われていないことに疑問を持ち、加害者が経営する会社に派遣社員として入社し、復讐を企てます。
しかしある日、その加害者の男が交通事故で死ぬ現場を目にします。
鈴木はその現場を立ち去った謎の男が、事故に見せかけて殺したと察知し、男を追い始めます。
事故で死んだ男の経営する会社は人体や臓器を売買するような非合法上等の業務内容で、至るところから恨みを買うような人物であったことから、当然殺し屋の業界でも瞬く間に彼の死のニュースが広がります。
ここで、名高い殺し屋である鯨と蝉も、各々異なるアプローチで彼の死に迫っていきます。
この二人がやがて鈴木に絡んでくるのですが、そのハウツー、「どうやって鈴木と関係性を持っていくんだろう」というワクワク感を抱かせる巧さはもう天才っ!
今回、彼らの出会いに関しては個人的にはあまり萌えなかったのですがそれは結果論であり、やっぱりこの過程のエキサイトっぷりは伊坂さんならではだなぁと思います。
マイハイライトは鯨と蝉の戦闘シーンです。
鯨をヒョードル、蝉をフランキーエドガーに見立てて読んでいたのですが笑、パウンドフォーパウンドを決めるような天下一武闘会のような描写は痺れました。
ただ、ここは本筋と関係ない部分でちょろっとで終わってしまうので、個人的には物語が加速する終盤に入れ込んでもらえると更に読後感が良かったかなと思います。
今回、多くの伏線の割にはオチにそこまで驚きが無かったのですが、相変わらず伊坂幸太郎のドヤ感に感服できたので良かったです。
新幹線や飛行機で是非おススメ!