- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1990/09
- メディア: 文庫
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『69(シクスティナイン』 / 村上龍
★ × 86
内容(「MARC」データベースより)
1969年、東京大学は入試を中止。そして九州の基地の町にある僕の高校は、ある日バリケード封鎖された。やったのは僕と仲間たち-。自伝的青春小説。2004年公開映画の原作。1987年刊の新装版。
今年一番の感動を与えてくれた『最後の家族』に引き続きの村上龍さん。
映画も大昔に観ましたが、「クドカン脚本で妻夫木くんが下ネタ連発で大暴れしてた」くらいの印象しかなかった本作を手に取りました。
舞台は1969年、長崎の佐世保が舞台。
主人公ヤザキはオトナ・社会に対して大きな反骨精神を持つ高校生。
同じ高校の松井和子という美女に恋をし、彼女の気を惹くために学校をバリケード封鎖してしまう。
しかし事態は甘くなく警察沙汰となり停学を喰らうも、復帰後今度は「朝立ち祭」という、映画・演劇・ロックがごちゃ混ぜになったフェスティバルを立ち上げる。
その過程で松井和子との恋愛も成就する、そこまでを描いた、枕詞を与えるならば「ハチャメチャ青春小説」なる作品です。
実はほぼ村上龍さんの実体験らしい。
青春小説とは言え村上龍、難解な社会派描写が続いたかと思えば、バリケード封鎖前後のキレッキレの読ませる展開があったりと、全く飽きることなく読めました。
また、バリ封が露呈した際の、ヤザキの父親の言動など感銘を受けるシーンも挟む辺り、さすがだなぁと思いました。
私が個人的に一番好きだったのは、最後の最後、ヤザキ及びキャラ立った脇役たちのその後がエピローグ調にザーッと紹介される場面。
例えば『ゴールデンスランバー』に代表されるように、伏線回収して興奮しきった読み手の心を沈めるためにあるかのような、静かに可愛らしいエピローグをよく描く伊坂作品、
私は当然好きなのですが、本作はそれとは真逆で、その後のストーリーの描き方がいい意味ですごく雑。笑
だってヤザキと松井は普通に別れてるし、シャブ中の店長はサラッと自殺してたりする。
実体験ベースで綴られるためかもしれませんが、ともすれば投げやりのようにも見える最後の登場人物の扱い方がなんとも小気味良くて、読後感がすごく良かったです。