- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2009/01/30
- メディア: DVD
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[内容解説]
鈴子は短大を卒業して就職もできずに、しかたなくアルバイト生活を送っているどこにでもいる女の子。どうにかしてこの生活を変えようと考えている中、ひょんな事件に巻き込まれてしまう。
「百万円貯まったら、この家を出て行きます!」
と家族に宣言し、百万円を貯めるたびに次から次へと引越しをして、1人で生きて行く決心をする。
行く先々の街で様々な人たちと出会い、笑ったり、怒ったり、素敵な恋をしながら、自分だけの生き方を見つけてゆく女の子の旅物語。
実は3回目ですが、前観たのはブクログを見るに3年前なので、また違った感じ方がすると思い手に取りました。
いやー…なかなかどうして、やはりこの映画のパンチ力足るや。
私は映画をあまり観ませんが、人生ベスト3を挙げるとするなら間違いなく入るでしょう、それくらい現時点で観てもガンガンに良かった。
蒼井優演じる主人公鈴子は前科持ちという状況もあって、
『自分のことを誰も知らない土地へ行き、100万円貯まったらまた次の土地へ』という放浪人生を送る。
行き先は山であったり海であったり、とりあえずホームから離れ現実逃避生活。
テレビCMで観る本作の設定はまるで食べたり、祈ったり、恋をしたりするような感じ笑
蒼井優、ピエール瀧といったキャストが尚更ハートウォーム感に拍車かけてます。
ただ中身は相当にヘビー。
中盤、それまで明かされなかった鈴子の心情が露になる場面があります。
それはバイト先で出会った森山未來に喫茶店で打ち明けるシーン。
自分探しなんかじゃないです。
いやでも自分はここにいるから。
と吐露される場面で、それまで物語に流れていたモヤッとした風景が一掃されます。
本当の自分は見つけに、だなんて星を見てインドに発つ若者のようなぬるさや余裕は鈴子に無く、
自分のことを誰も知らない地へ、消えてなくなりたい思いで放浪をする。
それまで見ていた「苦虫(蒼井優の時おり見せる困ったような笑顔)」の意味が急に様々な意味を持って迫ってきました。
ここで姿勢がピン!となると同時に、この空気感まとってた蒼井優すげえ!と打ちのめされました。
そして本作のもうひとつの肝は「現実逃避の鈴子」に並行して走る「現実まみれの鈴子の弟」、拓也のストーリーの対比にあります。
前科ある鈴子に加え、弟の拓也は学校でいじめられる日々。
そんな日常から脱却したいという思いで拓也は中学受験に励みます。
けれどある日、耐えられなくなった拓也は障害事件を起こし、「児童相談所に行った学生」として生きていくこととなります。
なぜ、拓也は障害事件に及んだのか?
それは、前科あるにも関わらず強く生きる姉に憧れ、エンドレス我慢の自分を恥じたから。
現実から逃げない生き方を決めたから。
という手紙を受け取った鈴子は、現実から逃げてばかりなのは本当は自分だということを思い知らされます。
このシーンも、一見お涙ちょうだいの演出の割に、脚本家タナダユキの主張を全て凝縮したようでとても神々しい。
加えてラスト、観る前のユルいイメージを取り戻すかのようにキュンッキュンの展開を織り混ぜてくるもんだから、観終わったのちもう完全に虜になってしまいました。
何に?タナダユキと蒼井優と森山未來に。
レンタルで3回観て尚心震えてる俺…これはDVD買いです。