世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
- 作者: 浅野いにお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/10
- メディア: コミック
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『世界の終わりと夜明け前』 / 浅野いにお
★ × 88
(商品の説明)
彼女との別れ話でもめていた友人に仲介役を頼まれた「俺」。だが、待ち合わせ場所に友人が現れず、「俺」は湯人の彼女と2人でオールナイトのボーリング場に行く。いっそのこと飲みに誘おうかも考えたが、朝イチの会議までに企画書を完成させないといけない「俺」は、ただ無駄な時間をどうでもいい会話で費やしていく…
近所に素敵な古本屋さんがあって、お盆休みにようやく行ってきました。
そこで何冊か買った中の1冊がこれ。『ソラニン』で有名な浅野いにおさんの短編集です。おもしろかったー。
タイトルから分かる通り、どの章の登場人物も脱力や死や消失といった負のイメージを纏っていて(というか浅野いにお作品はどれもそうなのかもしれませんが)、決して明るく開けた漫画ではありません。
ただ結末は決してバッドエンドでもなく、中村一義さんの「絶望の望を信じる!」というリリックが思い出させるような展開になっていて、絶望の「世界の終わり」と、希望の「夜明け前」をタイトル通り示しています。
あと、バカみたいな感想ですが、絵が見やすくて好きです笑。
実は背景画は実際の写真をフォトショで加工しているそうですが、最終話に出てくる夕日の情景とか素敵すぎて息を呑んでしまいました。この伝え方は小説には決して真似できない芸当です。
好きだったのは1話目『無題』。
①夜中から明け方にかけて、様々な場所で人生に絶望する人びとが少しSF風に描かれていき、
②夜が明けてからの情景を文字量多めで説明して終わり、という短編ですが、
①で描かれる人びとの「終わってる感」がなかなかエグく、なのに人物の表情や背景は非常に鮮やかなので、より空虚感が演出されていて何とも言えない気持ちになります。
んでそこから②で日が昇って朝を迎えるシーンにグラデーションのように映るんですが、挽回の仕方というか、「絶望の望」が見事に炙り出されていて、1話目から頭カーン!とたたかれました。
②での文章もそうですが、他のどの編も台詞や心情描写は非常に文学的・映画的で、そこに綺麗な絵が乗っているのが非常に印象深い。
願わくば短編でなく長編、今後輩におススメされている『おやすみプンプン』を読み、より長い枠を与えられた時の浅野いにおさんの描き方を早く味わってみたいです。