- 作者: ダニエル・タメット,古屋美登里
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/06/13
- メディア: 単行本
- 購入: 22人 クリック: 229回
- この商品を含むブログ (160件) を見る
『ぼくには数字が風景に見える』 / ダニエル・タメット
★ × 94
内容(「BOOK」データベースより)
4は内気で物静か、89は舞う雪のよう。ダニエルは数字に色や感情、動きを感じる共感覚者だ。円周率2万桁を暗唱し10言語を操るが、アスペルガー症候群で人の感情が分からない。「普通になりたい」と苦悩する彼が、「人と違う」自分を認めて辿りついた生き方とは。不思議な脳と柔らかな心を持つ青年の感動の手記。
円周率を2万桁まで覚え記録を作ったイギリス人の自伝。
全世界でベストセラーになった超有名作品らしいです。
著者であるダニエル・タメットさんは、幼いころから人付き合いが苦手な少年。
人の気持ちを汲み取れず、会話が続かない。
「アスペルガー症候群」という、人の感情を理解することが難しい脳の障害、そして「サヴァン症候群」という、特定の分野において超人的な能力を発揮する発達障害を持つ著者が、社会になじめず、自分が人と異なるという苦悩を重ねながら、けどそこを己の強みにして生きてきた姿を描いた作品です。
内容紹介にもある通り、彼は円周率を2万桁覚えた記録を保持しています。
それは彼が数字を、我々が見るそれとは異なり、光や暗い穴といった「風景」として捉えることができる能力に起因しています。
(円周の長さ)÷(直径)から求められる円周率 π(パイ)を暗記するには、単に3.141...というように数字を数字として詰め込むメソッドでは到底間に合いません。
そこには一切の規則性がなく、ただランダムな値が並べられているだけだからです。
だから一般的には、文章や詩を当てはめ、自分なりのストーリーを作って覚える方法が広く使われるようですが、
数字を風景として捉えることのできる著者の暗記法は、例えば3は少し傾斜のついた坂で、1で坂が光り、4で傾斜がゆるやかになって…といったように、数に質感や色、新しい形を与えながら覚えるという手法。
実際本書ではその説明が為されていますが、到底我々が理解できるようなものではありません。
けれど「共感覚」と呼ばれるこの特質を駆使し、彼は世界に名を轟かせました。
本書は、そのような超人的な能力を持っている彼の眼から見える世界が、一体どういった構造で見えているのか、それが譬えファジーで理解しがたいものであっても、「私のような人もいるんだよ」ということを広く伝えるために、根気よく説明されているのが特徴です。
円周率も勿論ですが、語学習得にも前述の特質が使用でき、単語の音やスペルから意味を連想する手法で、35歳にして10ヶ国語を操ります。
その覚え方も非常に面白く、全く異なる世界の見え方にゾクゾクしました。
…こう書くと、まるでこの障害を持つ全ての人が能力を持っているように思われそうですが、勿論著者は世間との強烈なズレをずっと浴びながら、その中で自分の生き方を見つけた過程があるので、ただ能力を以て暗記記録を樹立したことだけを見るのでなく、本書から著者の生き様を皆さんに感じて欲しいと思いました。