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(内容紹介)
この本の主役は、毎日本屋さんで働く書店員さんに取次の営業マンさん、それと大阪出身の作家・西加奈子さんです。
地元出身の作家さんをもっと応援しよう、書店の魅力をもっと伝えたい、それぞれの書店現場で同時発生的に湧き上がってきたそんな熱い衝動を、西加奈子さんの原作『円卓』(行定勲監督/芦田愛菜の映画単独初主演)の2014年6月21日(土)公開にあわせて冊子にまとめました。
西加奈子 × 津村記久子が語り倒す大阪、と書かれた表紙を見て、「好きな作家が記久子と西加奈子である大阪出身の俺が買わんで誰が買うねん!」と即座に購入しました。
(ちなみに明後日8月25日に津村さんの新刊出ます、楽しみ)
「書店員ナイト」というイベントの特別企画で行われた対談をまとめたもの。
書店員ナイトに関してはスタンダードブックストアの中川さんがよくツイートしていますが、この二人の対談…最高に豪華!
『ワーカーズダイジェスト』『円卓』など、二人とも大阪臭漂う作品を多く書く名手で、そんな二人が「大阪」を書くことに関して語り尽くしているレアな対談です。
元々私が二人の作品を好きになったとき、別に大阪出身だからという特別な感情は決して持っていなかったはずですが、どこかでやはり地元感に共振した部分があるかもしれません。
面白かったのが二人の異なるスタイル。
西加奈子さんの場合台詞、ナレーションの全てに関西弁を駆使する、パッと見で分かる大阪感を意識して出しているそうですが、
津村さんの場合せいぜいセリフだけで、あとは実名を出さないスタイル、「分かる人には分かる」自慰行為要素の強い出し方。
けれどいずれもしっくりくるのがとても不思議です。
特に西さんはくどいくらい関西弁を多用してくるので、もしかすると他の地域では売れてないのでは?と昔勘ぐったほど。
けれどこうやって原作が全国規模の映画になっているのを見ると、やっぱ純粋におもろいんやなーと感心します。
あと津村さんファンとしては、西さんが言う『まともな家の子供はいない』の感想がとても素敵に感じました。
あれってすごくドメスティックな話じゃないですか。
出てくる子たちはみんな家庭でいろいろ問題はあるけれど、夏休みに塾から出された宿題の冊子を全部やれるというのが、大きな波というか、物語の一番のドラマだと思うんです。
すごく近しいことを書く方が、実は世界中に広がるんじゃないか。
全部の場所がローカルやねん。
いやあその通り!しっっっくり!!拍手!!!
津村作品から感じる脱力感とよお分からんパワーって、前者が物凄くマクロな問題から来て、後者が笑えるほどミクロな出来事から来ているような気がします。
それって誰しも自分に置き換えることが出来て、
「今日俺は会社で劇的にミスをしたけれど、帰宅して今食っている目の前のホッケがとりあえず旨い」
みたいなことを全作品通じて訴えかけてくる印象があります。
それを西さんがズバッと言ってくれてる。
さすが作家、かつ二人は同年代で、お互いに持つ尊敬の念みたいなものも感じられてとても素敵でした。
二人とも今を彩る若手女性作家でフィーチャーされているけれど、こうやってオフの文章を読まされると、いかに二人が普通で、けれど「普通」がいかに大事で、そのことを人に伝えたいか、そういう気持ちを持って作品を生んでいるのかってことが非常によくわかりました。(何様だ俺は)
ついこないだ星野源さんの『蘇る変態』を読んだのもありますが、こういった表現者がコンプレックスの塊だったりドン暗い生活を送っていたり、作中の世界ようにあっけらかんと悟っている人格者でないというのが、ただ世に出た作品を読んでいるだけの私からすると非常に驚きです。
この方たちは、そういった感情の渦みたいなものを丸めて日本語に置き換えて、且つ楽しみの要素を注入して文章に載せているのかと思うと、本当に恐れ入ります。
そうやって世に出たものを摂取し、日々の贅沢としている私のような庶民がいるのです、なのでこれからも頑張ってください!
と、読み終えて感謝の念とエールで胸がいっぱいになりました。いや―ホント、あざまーっす!