『ザ・万歩計』 / 万城目学
★ × 81
内容(「BOOK」データベースより)
少年時代に大阪で阿呆の薫陶を受け、大学時代に自分探しの旅先で全財産を失い、はては作家目指して単身東京へ。ホルモーでついに無職を脱するも「御器齧り」に苛まれ、噛みまくるラジオに執筆を阻まれ、謎の名曲を夢想する日常は相変わらず。そのすべてを飄々と綴った初エッセイ集。文庫版あとがき「その後の万歩計」を収録。
『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』『プリンセストヨトミ』『偉大なるしゅららぼん』と、出す作品が悉く映像化される超売れっ子の万城目学さん。
私も上記4作くらいまでフォローしてたのですが、最近の作品は全く読めていません。
その理由は上記作品群の映画がいずれも面白くなかったという、小説とは関係ないところからきています。。(特にしゅらら~はキツかった…)
ただ、以前なにかのテレビ番組で見た著者は、柔らかな雰囲気に達者な言葉遣いで、とても好感を持ったのを覚えています。
ということでエッセイ、作家の日常語りを知った上で小説を読むことが好きなので、本書を手に取りました。
本書がはじめてのエッセイだそうな。
日々の下らない出来事、そして時折デビュー秘話や執筆活動に関する話題を織り混ぜた構成となっています。
どの作家もそうですが、一番面白いのは「なぜ私は作家になったのか」を知ることです。
元々京都大学法学部というエリート学歴な著者は、卒業後一般企業に就職しています。
地方の工場に配属され、毎日定時で帰宅しては小説を創作する日々。
東京本社への異動通知により会社を辞めることを決心し、周囲を騙しながら執筆するも全く芽の出なかった2年間。
半ば自棄で書いた、実体験が基になった『鴨川ホルモー』で爆発的に名を知られ、一気に売れっ子作家に仲間入り。
というよくあるサクセスストーリーであるものの、私が勝手に思っているのは、著者は本当はもう少しドッシリした、人生を問うような物語も書きたいんじゃないだろうかということ。
ホルモー以降も少し不思議(SF)な小説が続きますが、それらがすべて、ファンの期待に応えるための小説なんじゃないかと思っているのです。(いや、ホンマになんの根拠もなく、謎の目線で語っているだけですが)
あとがきにもある「バカらしいことこそ本質」という、星野源さんや宮藤官九郎さんのような哲学は本書からも小説からもすごく感じますが、私的にはもっとズブズブ暗い、方向性のガラリと変わった万城目さんが見たい。
と、ずっと思ってます。
(ここ2年くらい読んでないので、もしかして最近の作品はそうなのかもしれませんが。。)
小説に違わず本書もユルユルで、万城目ワールド大好きな人は購入間違いなしのエッセイでした。