- 作者: 長嶋有
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/12
- メディア: 単行本
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『ジャージの二人』 / 長嶋有
★ × 81
内容(「MARC」データベースより)
作家志望で失業中の僕。父は二度の離婚で慰謝料に追われているが、あまり働かない。そんな父と息子が携帯も届かない標高1100メートルの山荘で、アンチ・スローライフな日々を過ごすことに…。父との関係をジャジーに描く。
『問いのない答え』に続き二作目の長嶋有さん。
本作は同タイトルで、堺雅人さん主演で映画化もされているみたいです。
父親と息子の話。
とは言っても父親は数度離婚結婚を繰り返している。
息子はと言えば結婚しているものの、嫁の不倫に感づいているという、
なかなかに人生うまくいってない、そんな父親と息子のです。
物語は二人が真夏に山奥で過ごす情景が描かれています。
長嶋有さん、『問いのない~』が個人的に初体験だったのですが、
あの作品はソーシャルネットワークを模した作風ということもあり、「今、登場人物のうち誰目線で物語が進んでいるか」がかなり分かりにくい、言っちゃえば非常に読みにくい小説だったので、てっきり円城塔的「よく分からないけどとりあえずオンリーワン」という楽しみ方をする作家と勘違いしていましたが、
本書はめちゃめちゃ読みやすい文章でした。
『パークライフ』の白い吉田修一さんのような空気感。
(『問いのない~』はかなりイレギュラーだったのか)
前述の通り、父親と息子それぞれに色々抱える人生。
二人にも物語全体にもダウンライトが落ちたような、基本的に脱力感あるままに話は終結しますが、
主人公である息子が、実は無意識の内に父親に甘えたくて、自分の弱い部分を吐露したくてウズウズしているような印象を受けました。
それは明記されていないけれど、支離滅裂な父親の会話に対して、さりげない優しさで以て応対しているあたりに、なんとなくそんなことを思いました。
映画や小説で「父親と息子モノ」ってよくあると思いますが、
大概が過去に絶縁となった二人が時を越えて和解、はいココでカタルシス!みたいな展開が多いと思います。
ただ本作は両親は離婚しており、特に過去モメた経緯も無ければ、最終的に意気投合!ってなワケでもない。
親子というよりは友人、或いは先輩後輩の仲と言った方がしっくりくる関係性が描かれていて、そこは個人的にこれまであまり見たことない設定で新鮮でした。
ただあまりにもユルいので、途中で飽きてしまったのも事実…。
他の作品も読みたくはなりましたが、時間を開けてでいいかなと今は思います。