- 作者: 彩瀬まる
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/02/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『神様のケーキを頬ばるまで』 / 彩瀬まる
★ × 85
ブレイク必至の新鋭が贈る、珠玉の感動作!
一生懸命なのにうまくいかない。
なにげなく働いているように見えるあの人も、本当は何かに悩んでいるのかもしれない――あなたと同じように。
ありふれた雑居ビルを舞台に、つまずき転んで、それでも立ち上がる人の姿を描いた感動作!
『あの人は蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』の2作品で2013年に私を完全に虜にした彩瀬まるさんの最新作です。
彩瀬さんの描く小説は、他のR18文学賞受賞作品にも共通する「痛々しさ」「怖いものみたさ」が表現されています。
思っていても口に出せないことを書いちゃうような危うさ、そういった言葉を絶妙な表現で訴えかけてくるので、中毒性があってちょっとドラッグ要素も孕んでいる。
だから『骨を彩る』から時間をおいて本書を手に取りました。
が、1話目の『泥雪』でいきなりガツンといかれました。笑 やっぱこの人危険!
『泥雪』では、暴力を振るう夫と離婚し、マッサージ師として二人の子供を養うシングルマザーが主人公。
客として体にアザをもつ女性、引きこもりで壁を叩く息子との会話、心情描写、全てが、
暴力描写なんて一切無いのにも関わらず胸を叩かれ続けているようなそんな感覚。
『骨を彩る』同様、終始「喪失感」みたいなものが覆っていて、収束しないまま収束する、そんな気持ちで読み終えました。
あぁやっぱこの人は頻繁に読むべきじゃない、と、ここでちょっと一服しましたが、笑
以降の短編は『泥雪』よりももう少しライトに読みやすかったです。(これが1話目というのは余りに挑戦的過ぎやしないか)
2話目の『七番目の神様』、これが個人的には最も好きな物語でした。
主人公はイタリア料理屋の店長。
周囲の視線をガッチガチに考慮することで己の行動を決定しているような自意識の主で、気弱で思慮深い、あまり好感を持てない男だけれど、
ふとしたときに過るのは「あれ、こないだ俺もこんなこと思った気がする」という既視感。
これもやはり彩瀬さんの、普段意識の中では見まい見まいとしている、自分の汚くて人間臭い部分を剥き出しにしてくれる見事な表現力のせいなんだろうなぁと感動しました。
んでそうやってちょっと己を省みらせといて、主人公のすごく優しい部分を見せてくるあたりもニクい!笑
好きなのはアルバイトの学生に就職面接のアドバイスをするシーン、
そして最後、主人公が好きな女性に初めて自意識を脱いだ姿を見せるシーン。
『泥雪』とは対照的に、光射すようなシーンで締め括られてすごく良かった。
これから読む方、おすすめはまず2話目から読むことです。笑
(決して1話目がつまらないわけではありません、表現が悪くてすみません)
残り3話はあまりパットしないまま読了。
(最後の『塔は崩れ、食事は止まず』は面白かったですが、パンケーキ屋というのが最後までハナについてしまいました(偏見
一応、ある画家を通じて1話1話が繋がってはいるのですが、意味は汲み取れませんでした。
前作が良すぎたので、すこし期待が大きすぎたかもしれません、けれど今後も変わらず読み続けようと思います。