『黄金を抱いて翔べ』 / 高村薫
★ × 81
銀行本店の地下深く眠る6トンの金塊を奪取せよ。大阪の街でしたたかに生きる6人の男たちが企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。ハイテクを駆使した鉄壁の防御システムは、果して突破可能か?変電所が炎に包まれ、制御室は爆破され、世紀の奪取作戦の火蓋が切って落とされた。圧倒的な迫力と正確無比なディテイルで絶賛を浴びた著者のデビュー作。日本推理サスペンス大賞受賞。
内容(「BOOK」データベースより)
高村薫さん。恥ずかしながら初めて!
いわゆる襲撃もので、救いようのない、100%お前らが悪いだろと言い切れる男たちが主人公。
そう割り切ってカーチェイスのようにカーッと熱くなったまま突っ走りたいなぁと読む前は期待していましたが、思った以上に歯切れが悪い印象でした。
これは単に私の読み方の問題ですが、ダイナマイト等のディテールが特に要らなかったと思ってしまったのでした。
そのこだわりによって犯罪のプロフェッショナル性を際立たせる効果はあるでしょうが、結末を気にしすぎて先へ先へ進めたい欲がどうしても出てしまって、あまりのめり込めなかったのは反省です。
ただその(言葉は悪いですが)ダラダラと続く伏線の構築により、最後の金庫奪取のキレッッキレな描写で一気に爆発したのも確か。
村上龍さんの『半島を出よ』や、貴志祐介さんの『悪の教典』のような「よ!待ってました!」感を味あわせてくれる一級のエンタメです。
あと文章めちゃめちゃ上手い。
大人気著名作家なので当然だと言われそうですが、こりゃ売れて当然だと思わざるを得ない上手さで、読みながら安心感みたいなものを感じました笑
個人的なハイライトは主人公幸田がある人物に成り済まし電車に飛び乗り、そして飛び降りるシーン。
主要人物の面々は皆プロの犯罪集団ですが、その彼らの緊張感が伝わってくる。
わずか数ページの描写で淡々と進む冷えた感じに痺れた…
金城一紀さんのゾンビーズシリーズを、絞って濃ーい汁だけ抽出したような濃厚な小説です。
しかし読み疲れた…笑