- 作者: 田辺聖子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/01/08
- メディア: Kindle版
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『ジョゼと虎と魚たち』 / 田辺聖子
★ × 95
(内容紹介)
どこかあやうくて、不思議にエロティックな男女の関係を描く表題作他、仕事をもったオトナの女のさまざまな愛と別れを描いて、素敵に胸おどる短編、八編を収録した珠玉の作品集。
初の田辺聖子さん。
夏の角川フェアで装丁が魅力的だったのと、映画を2回観て親近感ある本書をまずは導入として著者に触れよう、と軽く手に取ったのですが、
いやーーー良かった!!!ひさびさ、恋愛小説でガッツリ持っていかれました。
初版は、私が生まれたまさかの27年前。この瑞々しさ!!
吉本ばななさんの『TSUGUMI』を読んだときの衝撃に似た、「良いものは時代問わず良い」という納得を味わいました。
映画『ジョゼと虎と魚たち』の原作を含む短編集で、各編は全て女性がメイン、そしてもれなく、少しダメな、痛々しさを伴った設定です。
例えば年の離れた若い男にのめり込んだり、30手前まで男を知らず生きて、大人びた妹に嫉妬したり。
その表現があまりに上手いので、女でもない私が「わかる!わかるぞ!」と納得させられるほど笑
個人的に最近ハマっていた「イタい女性にフォーカスを当てた小説」に当たるのですが、
今を彩る山田詠美さんや江國香織さんや西加奈子さんなどの女性作家はみな、田辺聖子さんの影響を受けてるんじゃないかと錯覚してしまいました。
「荷造りはもうすませて」では、後妻であるえり子と夫の秀夫がメイン。
秀夫は普段ご機嫌な男だけれど、前妻の元に行く日だけ不機嫌になる。
それは秀夫の「好きで行くのではない、殊に今日は嫌なことで出かけて行くのだ」という、えり子に対する無言の優しさ表現であります。
その時点で秀夫の優しさに涙出そうでしたが笑、そのあとえり子の放つ言葉、
不機嫌というのは、男と女が共に棲んでいる場合、ひとつっきりしかない椅子なのよ。
どっちか先にそこへ座ってしまったら、あとは立っていなければならない椅子とり遊び。
という表現にも即座に納得させられました。
ここまででわずか5頁!!
各編は決して長くないのに、無駄のない正確なパンチを打ち続けているからでしょう、それぞれ長編を読んだ気にさせてくれる。
贅肉を削ぎ落としたソリッドな代弁、もう達人!!
あとはやはり表題作『ジョゼ虎』の萌え感と死生観。
最後のシーン、
恒夫はいつジョゼから去るかわからないが、そばにいる限りは幸福で、それでいいとジョゼは思う。そしてジョゼは幸福を考えるとき、それは死と同義語に思える。
完全無欠な幸福は、死そのものだった。
私が映画を観てイマイチピンと来なかったジョゼと恒夫の関係性、
それがこの原作でようやく理解できた気がします。
いやーーーー、読んで良かった。。