『ツナグ』 / 辻村深月
★ × 75
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者」。
突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。
それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
辻村作品と言えば圧倒的に「スロウハイツの神様」が好きですが、他にも「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」など、数年前読んだ当時はかなりパンチを喰らった覚えがあります。
そのパンチ力の源と言えば、物語の展開とは少し逸れた「辻村論」と言うべき主張です。
話の骨子はむしろあまり好きじゃなく、例えば出てくるこどもたちがあまりにも現実的でない知的な発言をしたり、クライマックスの盛り上がりに無理があって白けてしまったりすることが多かった。
けれどその合間合間に挟まれた、主人公がウツウツと語る心情描写などが常軌を逸してたりして興味深いイメージがあります。
辻村さんはそうやって、マスとパーソナルを行き来しながらファン層を得ていく作家なんだろうなぁと思っていました。
その点本作は無駄がなく、つまり個人的にはあまりにあっさり終わった感が強かった。
ツナグと呼ばれる、生者と死者を会わせることができる能力を持つ男の子の話。
はじめ2編が楽しめず、3作目「親友の心得」4作目「待ち人の心得」は少し感情移入しました。
「親友の心得」はよくある友情もので、親友に裏切られた怒り故出来心で仕掛けたいたずらにより死なせてしまう物語。
感情移入はしませんでしたが、予想に反してバッドエンドだったことが良かったです。
「待ち人の心得」は、かなり昔に読んだ石田衣良さんの「美丘」を思い出しました。
これまた感情移入はしませんでしたが、どうも私は「破天荒で実直なギャルキャラ」に弱いようです…。
で、本書の核となる5章「使者の心得」で、ツナグを務める男の子の話となります。
ここで投げかけられる「使者に会うとはどういうことか」という問いに対し、私は今までの辻村さん作品同様、刺激的な哲学が鋭角で飛んでくることを期待しました。
先日、養老さんの「死の壁」を読んだからかもしれませんが、若い著者ならどうまとめ上げるのか興味を持ちました。
けれど物語中にその議論はほぼ描写されず、何ともあっさり流された感が残った…。
なにか作風が変わったのか?
うーん、、